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持てうる限りの愛をこめて

  • 第一展示場 | A-59〜60 (小説|エンタメ・大衆小説)
  • もてうるかぎりのあいをこめて
  • 武中ゆいか
  • 74ページ
  • 600円
  • 2021/10/3(日)発行

  • 著者 武中ゆいか

    「stay home forever」


    緊急事態宣言が六月二十日まで延長になった。 「緊急事態宣言が明けたら会おうね」と約束していた友達に連絡を取る。
    「また延びちゃったねえ」 「もういい加減会いたい」 「明けるまで待とうか」 「分かってるけど気持ちだけ溢れちゃった」 「そうだね」
    こんな会話をこの一年以上、何度も、何人とも繰り返してきた。
    会いたい人と、会いたいと思った時に会えないフラストレーションがじわじわと溜まって、誰もいない海に向かって、わーっと叫びたい気分だ。
    娯楽や旅行は制限付きの日々なのに、労働や生活は否応なしに続く。
    密を避けましょう、だけれど相変わらず朝の電車には人が箱詰めされ運ばれていく。
    デパートや商業施設、映画館や美術館が開けば、その場所では感染のリスクが低くとも、移動やその前後での会食の機会といったリスクは高くなる。
    頭では分かっているのにもう疲れ切ってしまった。永遠など簡単に起こるものではないのに、この出口の見えない生活は永遠に続いてしまいそうで眩暈がする。
    こんな時だけ医療従事者を羨ましく思う。 基礎疾患のない健康な若者にワクチン接種が回ってくるのはいつだろう。
    会いたい人に気兼ねなく会える日々はいつ戻ってくるだろう。
    マスク越しに頬を擦り合わせ、口付けを我慢すればいい日々はいつ終わるだろう。

    遠くのあなたへ会いに飛行機に乗り、雲の上から街を眺めるあの瞬間が恋しい。


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