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アイネ・クライネ・ストーリー

  • 第一展示場 | A-59〜60 (小説|エンタメ・大衆小説)
  • あいね・くらいね・すとーりー
  • 石嶋ユウ
  • 2022/11/20(日)発行

  • ■「アイネ・クライネ・ストーリー」    

     作品
     夜を求めて
     夜に必要なもの
     夜は残酷
     夜の王様
     夜が明けない
     夜よ、私を殴れ
     夜と朝

     「夜を求めて」  著者:石嶋ユウ

     夜は誰のものなのだろうか。家族も友達もいない、ひとりぼっちな、だけどそれが心地よいと思っていたアイネは訳もなくずっと考えていた。答えを先に言うのならば、夜は誰のものでもない。ただ、強いて言うならば、夜を生きていたのは、今から二秒後にアイネのもとに現れる彼女のような存在だ。

    「うわ!」  
     雲で月の見えない日々が続いていた風の強い日の夜。薄暗い夜道をアイネが歩いていると夜空から急に少女が降ってきた。この瞬間、アイネは逃げられなかった。何かに惹きつけられて、惚れ込んでしまった。訳もわからずに少女のことを抱き抱えた。
    「大丈夫?」  
     腕の中にいる少女とアイネの目が合う。
    「まあ、ね」  
     アイネに支えられて立ち上がる少女。とても綺麗だとアイネは思った。
    「あなた、どこから来たの?」
    「それより、逃げないと」  
     服についた土埃を払う少女。動きが忙しない。
    「えっ?」
    「後ろ」
      少女はアイネの後ろの方を指さした。後ろには黒ずくめの三人。こちらに向かって走ってくる。
    「とりあえず、じゃあね!」
     
     少女は走り出した。アイネは何かを感じて追いかけてくる三人の足を引っ掛けた。三人が転ぶ。
    「何するんだ!」  
     三人の内の一人が文句を言った。
    「だって、女の子を三人で追いかけてるの卑怯じゃん」
     アイネは三人にあっかんべーをして、少女の後を追った。

     アイネはすぐに少女を見つけた。少女の足はそれなりに早かった。
    「なんでついてくるの!」  
     追いかけてきたアイネの姿を見て、少女は訊ねた。アイネは何も考えずに、
    「あなたに惚れたから!」  
     と答えた。  
     すると少女は突然大きく笑った。
    「あなた、とんでもないバカね。でも気に入った。私はクライネ。そっちは」
    「アイネ。よろしく、クライネ」  
     走りながら笑い合う二人。

    「待て!」
      二人を追いかけてくる追手の三人。
    「しつこいなぁ、あいつら」
    「だね。どうする」  
     そこで、アイネは敢えて立ち止まった。それから後ろの方へ振り返る。思わずその場の全員が立ち止まった。アイネは遠い空の方を指さした。
    「ああ、UFO!」
     
     すると追手の三人は夜空の方を見上げた。その隙にアイネはクライネの手を掴んで、近くにあった物陰に隠れた。
    「あ、逃げられた!」
     三人の内の一人が叫ぶ。
    「追うんだ!」
     
     追手たちは物陰に隠れた二人のことに全く気づかず、あさっての方向へと走り出した。
    「まさか、本当にこの手が効くとは」  
     物陰から様子を見ていた二人。黒ずくめの男たちがいなくなったのを確かめてから二人は物陰から出てきた。誰もいないことを確かめてから二人は笑い合った。
    「いやーまさかだよね。こんな古典的な方法に引っ掛かるなんて」
    「だよね!」

    「ありがとう、助けてくれて」  
     クライネは深く礼をした。
    「いや、いいのよ。これくらい」  
     アイネは笑顔だった。その直後、二人のお腹が同時に鳴った。
    「なんか、お腹が減った」
    「だね」
    「ちょうど、パンを持ってるから一緒に食べない?」  
     クライネはポケットの中からパンを一つ出した。  
    「いいよ」  
     全ての始まりである。

       < 続く >



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