「とにかく、もっと早く寝ろよな」
今までの会話をまとめるように結ぶと、どん、と和馬が再び前屈みになって体重を預けてきた。
鎖骨や肩の骨が背中にあたって、和馬の細さを肌で感じる。ぐんにゃりと脱力している様子が降参だと言っているようで、そういう態度がひどく幼いものに感じられた。
まるで、保護しなきゃいけない仔猫を預かっているような感覚だ。口を開くと反抗ばかりするけど、和馬はやることがかわいいし、守ってやりたくなってしまう。
夏前にこすりあった映像が頭に浮かんできた。あのときも、はじめは抵抗したけれど、最後は篤史のいうままに快感に溺れていた。
和馬は流されやすい。なにか積極的なことや、要望を受け入れることが多いし、逆らわない。今日だって、エプロンをあてられても、騒ぎが大きくなるまでぼうっと突っ立っていた。
こんな調子で自分以外の奴になにかされたら、ただではすまない気がして不安になってしまう。
男だし、痴漢に遭うなんてこともないだろうけど、和馬なら満員電車で狙われそうだ。そこまで考えて、いや考えすぎだと首を振る。
「お前んち着くまで、寝てていいぜ」
「こんな揺れるところで寝れるかよ……」
ふてくされる和馬のくぐもった声が背中越しに聞こえてきて、篤史は自転車を漕ぎながら考える。
和馬のことが気になってしょうがない。普通の友達よりも親しくなりたい、もっと和馬と一緒にいたい。その先のことを考えると、えっちなこともしたいような気がして、頭が熱くなってしまう。
けど、そう言えば和馬はどうするだろう。
もっと警戒して近寄らなくなる? 口もきかなくなる? それくらいなら、今までと同じように親しい友達でいたほうがいい。学校の中で、和馬の一番の親友でいられたらそれでいい。
(俺は和馬と、どうなりたいんだろう?)
それが分からない今、なにか言って壊れるくらいなら、このままの関係でいたほうが幸せだと思った。
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