「桜散風」
「こちらへおかけください」
その椅子は、以前見たのと同じ位置に同じ格好で置いてあった。小さな丸い木の座面に細い背もたれがついている。腰掛けると堅くて、とても座り心地がいいとはいえない。
はい、終わりました、と声をかけられ、目を開いても、何が変わったのか分からなかった。確か高校時代のエピソードだったような気はするけれど、思い出せない。もしかしたら、たいした思い入れはなかったのかもしれない。
銀色の紙にくるまれた飴を受け取って、私は【梟トヲリ飴店】と書かれたカウンターに背を向けた。外へ出て手のひらを開くと、木漏れ日に照らされた包み紙が虹色にかがやいた。
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