これは、私がタイで出会った三十二歳の男性、チャイさんから直接聞いたお話です。
チャイさんの父・ブアさんがまだ幼かった頃、一家はチェンマイからさらに北へ行った山奥の村に住んでいました。その当時、ブアさんの父であり、チャイさんにとっては祖父にあたるサワンさんに、実際に起きた出来事だそうです。
タイの農村の夜は、驚くほど暗い。サワンさんは、先祖代々米を作る、真面目な農民でした。
八月の蒸し暑いある日のこと。サワンさんは突然体調を崩してしまい、あんなに精を出していた農作業ができなくなりました。一日中、ベッドに横になり、大好物だった唐辛子がたっぷり効いたソムタム(パパイヤサラダ)や、ラープ(肉の和え物)も、一切受け付けなくなってしまったのです。心配した家族が、ふもとの町から医者を呼びました。先生は聴診器を当て、首を傾げながら、
「残念ですが、お父さんは長くありません。来週の十八日には、お迎えが来るでしょう」
家族は嘆き悲しみました。そして、死の宣告があった十八日の朝、ついにサワンさんはベッドから起きてきませんでした。当時まだ子供だったブアさんが、必死に父の体を揺すりましたが、何の反応もありません。脈もなく、心臓の動きも、呼吸もありませんでした。
「ああ、先生の言った通りだ。お父さんは死んでしまった」
ブアさんは泣き、家族は葬儀の相談を始めました。まさにその時です。体は硬直してピクリとも動かないのに、剥き出しになった目玉だけがギョロッ、ギョロギョロと、まるで生き物のように動き始めました。
「生き返った!」
家族は喜びましたが、立ち会っていた医者は顔面蒼白になり、呆然と立ち尽くしていました。先生は震える手で再びサワンさんの手首を掴み、何度も脈を測りましたが、やはり心臓は止まったままなのです。
「先生、どういうことだ。目が動いてるじゃないか」
詰め寄る家族に対し、先生は絞り出すような声で答えました。
「……医学的には、もう死んでいます。心臓も動いていない。なのに、どうして目だけが動くんだ。こんな死人は見たことがない」
その日から、家の中に異様な匂いが漂い始めました。