創作BL│A5│ 24頁 │ 100円 │ 15/09/20 │ R18
オートロックのドアが閉まる音を合図にしたように、背中をぴったりと扉につけたままきつく抱きすくめられ、すぐに首の角度を傾けてぴったりと唇を重ね合わせられる。
三年ぶりに触れる身体、三年ぶりに触れる生ぬるく温かな吐息のその感触に、心臓を直接掴まれたみたいなぞわぞわとした息苦しさと甘い震えが全身を伝うのを感じる。
体重をかけるようにしながら忍び寄る舌がゆっくりと歯列をなぞるその間も、きつく抱きすくめられたまま、しなやかなその掌が身体の芯を辿るように洋服越しに背中から腰をまさぐる。その動きのもどかしさに、気が狂いそうになる。
もっと触ってほしい、もっと直により深く感じたい。口腔での戯れに応えるように舌を差しだし、きつく吸われながら鼻孔から吐息を漏らし、よくそうしたように、ふっくらとした唇を食むようにして、舌できつく吸う。
離れた年月のその隙間を埋めるように、必死に貪りあうように吐息を奪い合うそのうち、扉と彼の身体にぴっちりと挟まれているそのはずなのに、腰や膝が震えて力が入らなくなってくるのを感じる。崩れ落ちそうになる身体を腰に回された腕で支えられ、首筋に絡めた腕の力を強める。
ほんの一瞬唇を離して目をあわせれば、濡れたその瞳が、いつにない甘い息苦しさをはらんだ熱さでこちらを見つめくれているのが分かる。その瞳の奥にほんの一瞬見えた戸惑いの色が急に怖くなって、今度は自分から顔を寄せて、噛みつくみたいに乱暴にキスをする。
これじゃ足りない。これだけじゃ終わってほしくない。全てがほしい。この体中に満ちていく熱を受け止めてほしい。唇を離したその後、言葉にならないままただじっと見つめ返せば、どこか躊躇いの色を秘めたように見えたそのまなざしがそっと細められながら、濡れた唇を微かに震わせて、弱々しく言葉が紡がれる。
「……シャワーは?」
崩れ落ちそうな身体を支えるように体重を預けながら、僕は答える。
「いいよ後で、我慢出来ない」
肯定の意味を込めて小さく頷かれたその後、ぐらつく身体を引きずるようにしながらベッドに移動する。ふかふかと柔らかなマットレスの上に投げ出すように沈めたその身体の上にそっとのしかかられたその時、これから行われるであろう行為を思ってまざまざと心臓の内側に直接手を触れて撫でられるような恐怖と期待、その両方に染めあげられた色が全身を伝って、髪の毛一本一本からつま先まで一気に広がっていくのを感じる。
ハイスクールの卒業旅行として日本を訪れてくれたマーティンと三年ぶりの再会を果たしたのは、昼過ぎの事だった。
久しぶりに日本を訪ねてくれた異国の友人との再会。その形式を裏切らない形で待ち合わせ場所で顔を合わせた時には軽いハグと握手で再会を喜び合い、大仏が見たいと言ったマーティンのリクエストに応えるようにしてローカル列車に揺られ、パンフレットを片手に観光をして過ごす。
春休み中の鎌倉は予想通りカップルであふれ返っていたけれど、男同士の僕たちは勿論人前で手なんて繋げない。
どこかもどかしく感じながら「友達」の顔をして隣を歩いて、離れた時間の隙間を埋めるみたいにたくさん話をして、ざらざらした画面越しじゃない、生身の彼の姿を目に焼き付けるように眺める。
触りたい、抱きしめたい、キスしたい。早く二人きりになりたくてたまらない。もどかしい焦りを気づかれるのが怖くてわざとらしく目を逸らせば、どこか余裕たっぷりに見える笑顔で交わされる。
ねえ、ずるいよ。心の中でだけそう唱えながら、子どもがそうするみたいにシャツの袖を遠慮がちにぎゅっと引っ張る。触れたその指先は、熱を帯びて微かに震えている。
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