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はなり亭で会いましょう2

  • B-23 (小説|エンタメ・大衆小説)
  • はなりていであいましょう に
  • 寝覚の朔
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 144ページ
  • 800円
  • https://dokusyaku.com/?page_i…
  • 2021/1/17(日)発行
  • イベント頒布の他、委託販売やKindle版もあります
    ぽんつく堂さん
    架空ストアさん

    あらすじ

    主人公の一人・渡辺涼花は二十歳の誕生日を迎え、晴れて飲酒解禁。かねてから興味を持っていた日本酒を贈られ、その味に期待が高まるのだが……? 季節は秋。紅葉シーズンに彩られる京都の大学は、学園祭準備で忙しくなる。 そんな中、サークルで親しくする年下男子が涼花に急接近!? 一方、はなり亭での一人飲みを楽しむ重森絢子は、職場の後輩指導に精を出すが思うように進まず、心が折れそうになり……

    新たな年と小悪魔男子

    はなり亭でのアルバイトに勤しみ、大学生活も順調な渡辺涼花は二十歳の誕生日を迎える。 しかし最近、後輩男子に懐かれているのがどうにも落ち着かない。しかも、ルックスの整った可愛い系イケメン君だから、恋愛弱者である自分とはどう考えても釣り合わない相手からのアプローチに、ただただ困惑していた。

    「そりゃ、その子、涼花ちゃんに好意持ってるんじゃない?」
    「まさかぁ……!」
     もはや涼花の日常の一つといってもいいほど、慣れた風景になりつつある、はなり亭のアルバイト。今日は店主の御厨が休みを取っているので、料理人として店を仕切るのは大河内だった。開店前の準備時間、涼花は雑談ついでに後輩に慕われていることを話していた。
    「からかわないで下さいよ!」
     大河内の軽口を受け流しながら、涼花は開店準備を進める。自分が異性からの好意を向けられ、アプローチされるなんてありえない。
     涼花はこれまで、そういったこととは無縁であり、これからもそうであろうと自覚していた。
     例えば明菜のような……恋愛体質で異性が放っておかないくらい可愛い女の子であったなら、年齢を問わず好意を持った異性がアタックしてくれたことだろう。
     残念ながら涼花には、異性から告白された経験はない。つまり自分は、同世代の異性から見て、魅力的ではないのだ。
    「ほら、お母さん的な親しみやすさ、とか? 私、しっかり者って思われることが多いから、『おかんキャラ』みたいになっちゃうんですよ。だから、それで懐かれてるのかもしれないじゃないですか?」
     こういった自分評は傷つかないこともないのだが……物事を丸く収めるには、必要な判断でもある。
     ちょっと異性から好意的な扱いを受けているとはいえ、勘違いをしてはいけない。「もしかして?」と期待する気持ちを膨らませてしまうと、思わぬダメージが返ってきてしまうものだ。
     だから常に、自分は「選ばれない方」だと自覚しておきたい。

    心騒ぐ日々と温かな贈り物

    後輩男子からのアプローチに戸惑う涼花だが、密かに憧れているはなり亭の常連客・重森から誕生日を祝われ、心を弾ませる。

    「これ、良かったらお祝いに、と思って持って来たんだけど……」
    「えっ? これって……」
     差し出されたのは、ガラスでできた小ぶりのぐい飲み。温かな色使いで、これで日本酒を飲めばすごく素敵な時間になりそうだ!
    「私のお古で申し訳ないんだけど、そんなに高価なモノでもないから、気軽に使えるかなと思って……」
    「いいんですか! そんな……どうしよう……」
     これは宮田からの誕生日プレゼント以上のサプライズだ。
    「迷惑だったら、無理に受け取らなくてもいいから」
    「迷惑じゃないです! 嬉しいです! ホントに……ホントにいいんですか? 頂いても?」
     重森は照れ笑いのような表情で頷く。
     日本酒を飲むときに使う酒器を手に入れたいと思っていたが、こんな形で手に入るとは!

    理不尽な使いと大切な関係

    仕事の行き詰まりを解消すべく、後輩教育に注力する重森絢子。しかし、人事からあらぬ誤解を受け、言いがかりに近いことまで指摘される始末。そんな折、はなり亭で働く涼花が誕生日を迎えたことを知り、しかも彼女が日本酒に興味を持っていると聞いて、何できないかと考える。

     はなり亭に訪れた二日後の夜、絢子は再び店の前に居た。
     こんなに短い期間に何度も足を運ぶのはこれまでになく、自分がやろうとしていることが本当に良いのか躊躇われ、絢子は店に入るかどうかを迷っていた。あまり長くこの場に立ち尽くしていては、変な人物に見えるだろう。
    (やっぱり行き過ぎたことをしているように思うし……)
     これはただの自己満足かもしれない。一方的にありがたがっているだけで、相手は特別な意図を持っていない可能性が高い。そもそも客と店員の立場だ。恋愛と同じく、気持ちの温度差があっても不思議ではない。
    (気味悪がられて、はなり亭に行きづらくなるのも……うーん……)
     ずっと店の前に立っているわけにはいかないので、絢子は通りを何度も往復する。……この動作もいい加減やめないと、おかしな人になってしまうのだが。
    「あれ? 重森さん、今、仕事帰りですか? お疲れさんです」
     挙動不審になっているところへ声をかけられ、絢子はギクリとなる。声の主は客の見送りに出ていたと思われる、はなり亭の店主・御厨。
    「あ……はい、まぁ……」
    「寄ってかはりますか? 今日は珍しく、涼花ちゃんがお客さんとしてカウンターに居るんです」
    「えっ? そうなんですか?」
     ならば今日、カウンターに座れば、絢子と涼花ちゃんは同じ客の立場で接することができるということか!
     だったら絢子が考えている行動も、少しは自然にできるかもしれない……!
    「じゃぁ、その、少しだけお邪魔していきます……」
    「カウンターどうぞ」
     御厨に促され、絢子ははなり亭のカウンターに座る。ちょうど隣には、同じくらいの年頃の男の子と楽しそうに食事している涼花ちゃんの姿があった。

    恋愛未満と偽りの王子

    学園祭の準備が本格化し、忙しく過ごす涼花。後輩からの好意を感じつつも、まだ受け止められずにいた。そして、迎えた学園祭当日。そこで後輩男子の意外な過去が明かされ……

     状況が呑み込めない涼花だが、この二人と宮田が知り合いだということはわかる。女性の方は宮田に好意的な態度を見せているが、宮田は恐怖と困惑で表情が硬い。そして男性の方は……睨むような目つきで宮田を見据えている。
    (どうしよう、私が関わっちゃいけない感じ? でもなんだかこの雰囲気って……)
     おそらく涼花は部外者なのだ。だから外すべきなのだが……怯えたような宮田の様子と、強い視線を向ける男性の存在を考えると、放っておけない気もする。
     涼花が対応に困っていると、宮田が俯きながら言葉をつないだ。
    「すいません、センパイ。高校の時の同級生で……こいつらと話したいんで、センパイは外してもらっていいですか?」
    「いい、けど……大丈夫?」
     そっと涼花の方を向く宮田の表情は、これまでに見たことないほど弱々しく、無理やり笑おうとしているようにも見えた。
    「一緒に、学祭楽しみたかったんですけど……やっぱ、オレには、そんな資格……ないのかも」
    「宮田くん?」
    「心配しないでください。今日、涼花センパイと一緒に居られて、良かったです」
     最後にそう言い残して、宮田は高校の同級生だという彼らの方へと歩き出す。
     涼花は彼らのことを知らない。だから関りようがないのだ。
     しかしそれでも、宮田が見せた苦しそうな表情が、涼花の頭から離れない。
    「終わったら、連絡して! 話聞くから!」
     涼花の声に一瞬宮田は足を止めたが、振り返ることなく同級生の方へと歩いていった。今の自分はこれ以上関われないのだと理解した涼花は、言われた通り、この場を離れることにした。

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