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神さまを助けた蛇(神話シリーズ1)

  • 南1-2ホール | J-76 (小説|ファンタジー・幻想文学)
  • かみさまをたすけたへび
  • 遠野みづき
  • 書籍|B6
  • 28ページ
  • 200円
  • https://www.pixiv.net/novel/s…
  • 2006/12/30(土)発行
  •  むかしむかし、神が世界を作ってまもない頃のお話。世界を形作ったのは大地(おおつち)の神と大風(おおかぜ)の神でしたが、地下には奥底(おくそこ)の神が沈んでいました。奥底の神は度々地上に災いをもたらし、生き物を苦しめます。大地の神は奥底の神と話し合おうと地下へ赴きます。大地の神を慕っていた灰色の蛇は心配になり、そのあとを追っていったのでした……。
    【作者の想像世界の創世神話一作目です。※表紙のデザイン、紙の種類が見本と違う場合があります】


    「神さまを助けた蛇」

     むかし、むかし、世界の始まり

     神さまは輝きの中にいた
     輝きを見る神さまはそれはそれはしあわせだった
     そのうちに神さまは二つに分かれた
     輝きをそのまま眺めていたい神さまと
     輝きを集めて変えてみたい神さまとに
     集める神は輝きをよせ集めて強くした
     ゆえにその周りはいっそう暗くなった
     眺める神はそれもまた美しいとただ眺めていた

     よせ集めた輝きの塊は複雑に輝いていた
     集める神はさらに美しい輝きを創ろうと塊をかき回した
     すると重いものは沈み、軽いものは浮かんだ
     集める神は輝きの塊の中に入ってみたくなったが
     大きすぎて入れなかったので自らをちぎってそこに入れた
     かけらは重いものの中に沈んで見えなくなった

     集める神はもう一度自らをちぎった
     そのかけらは大きすぎたので二つに分けた
     ひとつめを入れると重いものの上でとどまった
     それは重いものを固めて大地とし、大地(おおつち)の神となった
     ふたつめを入れるとそれは軽いもののなかに浮かんだ
     それは軽いものをかき回して澄ませ、大風(おおかぜ)の神となった

     ふたつの神は共に働き始めた
     輝きの塊を美しい世界にするべく
     集める神はふたつの神に力を分け与えて小さくなった
     眺める神は輝く世界を見つめつづける
     世界を照らしあたため、満ち足りた気持ちのまま
     こうして世界は廻りはじめ、ものがたりはつむがれる

       *   *   *

     むかしむかし、世界の始まりは空と地の区別もつかない混沌としたものでした。その中へ初めに降りた神さまは、その混沌の中へ沈んでしまいました。その次に降りた神さまは、自分が沈んでしまわないように大地を創りました。そのことから、この神さまは大地(おおつち)の神と呼ばれるようになりました。
     そのとき、大地の神は固めた地の下に誰かがいるとは気づきませんでした。自分より先に誰かが世界に来ていたことを知らなかったのです。
     固めてしまった大地のせいで、混沌に沈んだ神さまはそこから出られなくなってしまいました。後に奥底(おくそこ)の神と呼ばれることとなる神さまは、大地の神をひどく憎みました。けれども、そのときはどうすることもできませんでした。
     大地ができてまもなく、もう一人の神さまが降り立ちました。先に降りた大地の神を探したのですが、辺りにはとても濃い靄が立ちこめていて、何も見えませんでした。
     その神さまは辺りを大きくかき回しました。すると、強い風が起こって靄を吹き飛ばしました。辺りは澄んで、よく見えるようになりました。そのことから、この神さまは大風(おおかぜ)の神と呼ばれるようになりました。
     大風の神は大地の神を見つけました。この神々は同じ塊から生まれていたので、お互いをとてもいとおしく思い、共に存在することを喜びました。
     二つの神は世界を居心地よく美しくしようと手を取り合って働き始めました。その仲睦まじいようすを奥底の神はずっと感じ取っていました。世界に最初にやってきたのは自分なのに、誰もそのことを知らず、世界が自分を蔑ろにして変わっていくのを、奥底の神は激しく怒りました。その怒りは熱い泥となって地上に噴き出ました。
     それを見て二つの神は地面の下に先客がいたことを知りました。どうにかして怒りを静めてもらおうと二つの神は心をこめて謝り、贈り物をしました。けれども、奥底の神の怒りはおさまらず、その暗い力は度々地上に噴き出して二つの神と世界を傷つけました。その力は目に見えるものもありましたし、見えないものもありました。
     これからはじまるお話は、そんな古い時代の出来事です。

       *   *   *

     神々の住まうところのそばに、小さな灰色の蛇が暮らしていました。蛇は最も古い動物のうちの一つでしたが、その頃の蛇には蜥蜴のように手足があり、身体ももっと短かったのでした。けれども、うろこに覆われた姿や冷たい体から、ほとんどのものが蛇のことを『奥底の神』に近しいものだとして忌み嫌っていました。
     蛇はどこへ行っても嫌われものでした。けれども、それが蛇の心を曲げることはありませんでした。それが、蛇が奥底の神ゆかりのものでない証拠でした。他のものの心を騒がせることを嫌った蛇は、なるべく目立たないようにひっそりと暮らしておりました。
     あるとき、蛇が日向ぼっこをして身体を温めていると、大地の神が通りかかりました。軽やかで美しいその姿を見て、蛇はそっと陰に隠れようとしました。ささやかな足音に、大地の神は気付いて声をかけました。
    「蛇や蛇、わたしに構うことなく、身体を温めなさい」
     蛇は低い頭をさらに低く、地にぺったりつけて言葉を返しました。
    「おやさしきお言葉、感謝いたします。そのお言葉で己の身体はずいぶん温まりました」
    「蛇や」
     大地の神は蛇の隣にとどまって言いました。
    「おまえは本当に謙虚なのですね。おまえを悪し様に言うものも多いが、わたしは知っています。おまえは『奥底の神』より生まれいずる者ではないことを。悪評を取り払うことはわたしにはできませんが、何か望みはありますか?」
     蛇は首を振りました。
    「もったいないお言葉、うれしく存じます。己はこの姿のために誰にも執着も束縛もされることなく、自由でございます。その自由が何より。生きる力は大地の神さまよりいただきました。それだけで結構でございます」
     大地の神はほほえみました。
    「自由。その自由とやらがおまえの役割に多くの力を発揮するでしょう。善きにしろ、悪しきにしろ。ですがそれも理(ことわり)の中でこそです。おまえの思うままに生きてゆきなさい」
     大地の神はやさしく笑い、去っていきました。蛇は、思いがけず神と言葉を交わせたことを交わせたことをとてもうれしく思いました。

       *   *   *

     神々にとってはほんの少しの時が過ぎ、奥底の神がその怒りをたぎらせてあちこちに地割れや熱い泥の池を作るようになりました。奥底の神は怒りをためてそれを一気に爆発させ、力が尽きると何事も無かったかのように静まるのでした。それでも一度奥底の神が暴れだすと手がつけられず、地上の生きものは苦しんで弱ってしまいました。
     大地の神はたいそう悲しんで、奥底の神と話し合おうとしました。けれども、奥底の神は澄んだ大気の中は苦しいといって出てこようとしません。かといって、もう一度大気をにごらせれば、生きものたちは全て死に絶えてしまいます。
     大地の神は奥底の神の怒りでできた地の裂け目に向かって言いました。
    「あなたが出てこないなら、わたしが参りましょう」
     大風の神や神の下部たちは反対しました。
    「奥底の神はまともに話し合う気などないに違いない。それどころか、そなたを無事に帰す気もないだろう。地中では我が風の力も届かない。大地の神よ、やめておくれ」
    「それではいつまで経っても世界はこのままです。わたしたちが苦労して創った世界を、いつも奥底の神が壊してしまう。この繰り返しを止めなければ、生きものたちは安心して暮らせません」
     大地の神は大風の神がひきとめるのも聞かずに裂け目の中へ下りて行きました。その様子を、灰色の蛇も見ていました。小さかった蛇はとても大きくなっていました。
     蛇も大地の神が心配でなりませんでした。その蛇を他の動物たちが見つけて言いました。
    「こんなところに嫌らしい生きものがいるぞ。おまえは大地さまの不幸を願っているのだろう」
    「己がそんなことを思うはずはありません。みなと同じように、大地さまの身を案じております」


    (サンプルはここまでです。ピクシブにはもう少し長く載せています)

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