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【BL】ネオン街の男娼【R18】

  • 第二展示場 Fホール | い-39 (小説|BL)
  • ねおんがいのだんしょう
  • まつのこ
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 136ページ
  • 700円
  • 2020/4/5(日)発行
  • R18BL


    「黒龍は金持ちなんだね。羨ましい……」
    その日暮らしがやっとの男娼:麗蘭(リィラン)は、ある日の仕事帰りに車に轢かれそうになっていた少女:凛華(リンファ)を助ける。
    彼女はお礼をしたいと申し出るが断ろうとする麗蘭。
    そこへ従者の春鈴(シュンリン)がやって来て彼女からもお礼をしたいと言われる。
    断れなくなった麗蘭は屋敷に案内され、屋敷の主:黒龍(ヘイロン)と出会う―――
    マフィアのボス×その日暮らしの男娼によるどエロピュアストーリー

    イラスト:にゃっき様


    ~~~~~~~本文サンプル~~~~~~~
     ようやく建物の外に出ると、空は真っ暗であった。だが、あちこちにあるネオンの灯りのせいで暗さを全く感じさせない。
     麗蘭(リィラン)は慣れた様子で人で賑わうネオン街をすたすたと進んでいく。
     夜にも拘らず人通りの多いこの場所は、酔っ払った人やいかがわしい客引きをしている人で賑わっていた。
     その中に、真っ当と言える人はどれくらいいるのだろうか、と考えることもあった。
     麗蘭はそれらに一切目を向けることなく、背中を少し丸めながら歩いていた。こんなくたびれた姿に一体誰が話し掛けるのか、と内心思っていた。
     麗蘭は、毎日違う男に抱かれ、時には一日中何人もの男に抱かれ続けることもある男娼である。もう何人と身体を交えたか憶えておらず、嫌な客と相手をすることもあった。それでも、誰もが好むような純粋で淫靡な演技を続けているおかげで、麗蘭はすっかり人気のある存在ではあった。
     しかし、いくら稼いでもその日暮らしがやっとの貧しい生活を続けている。いつしか裕福な生活を夢見ることもなくなり、ただひたすら金で抱かれる仕事をしている毎日であった。
     その身体は、男に抱かれ、どれだけ多くの金を貰えるかということ以外何も考えていなかった。
     広い通りに出ると、一気に車の量が増えていった。それに反し、怪しげな店はほとんど姿を見せなくなったが、ネオンの灯りは減ることはなかった。
    「ふぁ~あ……」
     疲れきっているのか、大きく欠伸をしながら歩いていく麗蘭。次々と通り過ぎていく人や車に逆らっていくように、多くの人が向かっていくのと反対方向に歩いている。
     再び角を曲がり、少し狭めの通りへと差し掛かる。
     所狭しと並ぶ派手な店や看板が圧迫感を与えるこの場所に、何もかもが似つかわしくない可憐な少女が車道の真ん中を歩いていた。地毛であろう金髪に、白いレースに囲われた黒いワンピース。麗蘭とは全く異なる、いかにも育ちがよさそう、といった風貌である。
     誰かを探しているのか、辺りをキョロキョロと見渡している。
     麗蘭はやけに目立つその姿が視界の左側に入る。車道を歩いているために危なっかしい印象はあるが、それ以外にもやけに釘付けにされる印象を与えられた。
     幼い少女がこんな時間にこんな場所でどうしたのだろう、と訝しげに思い、彼女に向かって近付いていった。
     すると、麗蘭が来た反対方向から猛スピードで車が走ってくる。
     それに少女は気付いていないようで、ずっとその場を歩いていた。
    「危ないっ!」
     咄嗟に叫ぶと同時に麗蘭は走り出していた。人の波を掻き分けながら、車道へと飛び出していく。
     あと少しというところまで車が迫り来る中、少女へ腕を伸ばす。
     麗蘭の行動でようやく自分の状況に気付いたようで、スピードを落とさない車に対して恐怖を露わにしていた。
     彼女の身体に触れられそうな距離まで麗蘭は進み、そのまま彼女の身体を抱き止めて走り続ける。
     前のめりになりながらも車道の端に到達すると同時に、二人の真後ろをスピードを落とさない車が走り抜けて去る。
     麗蘭は勢いを止められず、前に進みながら倒れていく。このままでは少女に傷を付けてしまう、と頭の中に過ぎり、身体を傾けていく。
     左腕が真下を向いたところで地面に触れ、二人分の重みがそこに集まりながら、麗蘭たちは滑っていく。そして、麗蘭の身体に地面からの衝撃が走り、全身を響かせる。
    「ってて……」
     周囲にいた人々は驚き、麗蘭の姿を見ては離れながら眺めていた。誰も関わりたくないが様子が気になる、そんな雰囲気である。
     そういった人が増えていき、麗蘭たちを中心とした人だかりはあっという間に大きくなっていった。
     だが、今の麗蘭にはそんな他人の様子は微塵も視界に入っておらず、目の前の少女にだけ意識が向けられている。
     自身の痛みがようやく落ち着いたところで、視線を少女に向ける。
    「大丈夫、怪我はない?」
    「う、うんっ」
     麗蘭は目の前の少女に、今までとは雰囲気の全く異なる優しい口調で問い掛けた。
     ただ彼女のことだけを心配し、無事を確認すると優しく微笑む。仕事のときとは違う、心から喜んでいる、とても優しいものである。
     安心したところで二人は起き上がる。少し汚れた麗蘭の姿にホッとした人々であったが、前の方にいた数名が少しざわめく。
     麗蘭の剥き出しの左腕は激しく擦れ、血だらけになっていたのである。
     見るからに痛々しいものは、怪我を負った本人よりも周囲の人たちの方が騒がしいものとさせていた。
     麗蘭に抱かれたままの少女がようやくそれに気付き、麗蘭に話し掛ける。
    「腕を怪我してしまっているわ。手当てをしないと」
    「ん、え……? あぁ、だから痛かったのか。これくらい平気平気」
    「でも……」
     麗蘭が断って立ち去ろうとしたその瞬間、再び車がやって来て二人の前で停車する。
     車体が黒一色に染まって異質を放ったそれは、近寄りがたい雰囲気を醸し出しており、観衆は少し後ずさる。
     後部座席のドアが開けられ、黒いジャケット姿の女性が出てきた。慌てていた様子であったが、少女の姿を見つけるなり、安堵したような息を吐きながら近寄ってくる。
    「凜華(リンファ)様、探しておりました。さぁ、帰りましょう」
    「あのね春鈴(シュンリン)、この人があたしを助けたから怪我をしてしまったの。だから屋敷に連れて帰って手当てをしてあげてほしいの」
     凜華と呼ばれた少女に言われ、春鈴は麗蘭の存在にようやく気付く。無表情で近付いていき、深々と麗蘭に頭を下げる。
    「この度は凜華様をお助けいただきありがとうございます。怪我の手当ても致しますので、ぜひお礼をさせてください」
    「んー……。分かった」
     同じことを二度言われたせいか、春鈴に対する返答に麗蘭には断る気配が全く見られなかった。

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