パァン――
人気のない広大な土地から、乾いた銃声が響き渡る。街の中心からは距離があるようで、大きな建物がポツリと一つ建っている以外は、芝生の生えた牧場のような敷地が広がっているだけだ。
建物から少し離れたところには、穴の開いた的が立てられ、薄っすらと煙が出ている。先ほどの銃声によるものだろうか。
さらにその先、的から数メートル離れた場所には銃を構えているラフな格好をした少年が立っている。銃口は的を向いており、これらのものは彼の仕業であると証明している。
獲物を狙う鋭い視線は撃ち終わった的から離れず、まるで誰もが一瞬で恐怖に包まれてもおかしくない。
カチャ、と次弾が装填され、引き金を引く。もう一度乾いた銃声が響き渡るが、的に変化はなかった。
だが、煙はより強く出ていた。
どうやら、銃弾は貫通痕を寸分違わず通り抜けていったようだ。
ようやく少年は銃を下ろすが、彼の中にまだ殺気が残っている。周囲がピリピリとした空気に包まれている。
「ふーっ」
彼の姿を背後から見ていた、濃いピンク髪の肩下まで伸ばした女性が、わざとらしい息遣いをした。手元にはまだ火の点いた煙草があり、煙を燻らせながら少年の元へ近付いていく。彼女は終始少年の行動を見ていたのか、何か言いたげである。
「狙いは完璧だ、ヴォルツ」
彼女の低めの声に、チラリと背後へ視線を向けるヴォルツ。今にも彼女のことを射抜きそうな姿はそのままに、口を開こうとしない。
「そう睨むな。一応褒めたつもりだが?」
「別に。エリサを睨んだつもりはない」
ヴォルツは低い声でボソボソと呟くと、エリサから視線を逸らして銃をロックする。
「ヴォルツ、今日の練習はもう終わりだ。行ってもらいたいところがある」
「承知した」
再びエリサに視線を向ける。表情は変わらず無という表現が正しいが、瞳から殺気が消えていた。
エリサはヴォルツに近付いていき、小さな紙を渡す。折りたたまれたそれには、地図のような案内が描かれている。
すぐにそれをポケットにしまい、手に持っていた銃も上着の内側へと入れ、エリサに一言も声を掛けることなく歩き出した。その方向の先には、建物が並ぶ街の中心がある。
ヴォルツの後ろ姿を眺めながら、エリサは再び煙草を咥えて煙を吐き出す。
ようやく吸い終えた頃には、ヴォルツの姿はとても小さくなっていた。
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