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【BL】孤独な魔物は愛を知る【R18】

  • 第二展示場 Fホール | い-39 (小説|BL)
  • こどくなまものはあいをしる
  • まつのこ
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 120ページ
  • 1,000円
  • 2022/9/4(日)発行
  • R18BL

    「……でも、僕に構わないで!」
    人には魔力が秘められた世界のとある村で、一番剣が強いレオは魔法が使えなかった。
    村の人々を魔物の驚異から守りたい一心で、日々見回りをして過ごしていたある日、恐ろしい魔物がいるという森の奥へ踏み入れる。
    そこで一人の青年クレインと出会った──

    魔法が使えない青年と、魔力が強すぎる孤独な青年の、ハートフルファンタジーストーリー


    ~~~~~~~本文サンプル~~~~~~~
    「てあぁっ!」
     レオの視線の先には魔物がいる。
     容赦なく襲い掛かってくる人とは異なる姿をした存在に、レオは臆することなく剣を振りかざす。的確に、素早く繰り広げられる攻撃は、狙っていた場所へしっかりと刃を入れた。
     急所を斬りつけられた魔物は、耳障りな声を上げながらその姿を灰へと変えていった。徐々に形が消えていき、ここに魔物がいたという痕跡は全くない。
    「あ、ありがとう、レオ!」
     レオの後ろにいた女性が安心した声で感謝を伝える。
     くるりと振り返ってその表情を目にした途端、レオの頬は緩んだ。
    「無事でよかった。魔物ならいつだって俺がやっつけるからね!」
    「レオは頼もしいねえ。剣の腕は村一番かな?」
    「そうかも!」
     あはは、と笑うレオの声に、女性もすっかり笑顔になっていた。
     魔法は使えないけれども、どうしても村の皆を魔物から守る力が欲しい。幼い頃から抱く願いは、剣術という技術で実現することができた。
     人一倍誰よりも努力を積み重ねていき、今ではすっかり頼られる存在になった。
     誰かに頼られることは嬉しいけれど、安心して暮らすためには魔物の数が減ってほしい。そのためには、今しっかりと戦っていくべきだ。
     レオは剣を鞘に収め、腰にしっかりと下げた。
    「じゃあ、気を付けてね」
    「レオはどうするの?」
    「もう少し森の方を見回ってくるよ。最近魔物の数が増えてるらしいから」
    「気を付けてね、レオ。森の奥は特に危険だから」
    「分かってるって」
     そう言ってレオは森の方へと進んでいった。
     魔物は森の中に生息しており、人々はあまり近付かないようにしてはいる。しかし、村の外へ出ていかなかればならないこともあるため、また、村に近寄られないようにするため、レオは見回りとして森の中へ入っていく。
     森の奥には魔物の棲み家があり、そこには誰も手の打ちようがない恐ろしい魔物が棲んでいる。
     レオは小さいときからそう言い聞かされていた。
     子どもは皆そのことを聞くと怯えていたが、ただ一人レオは立ち向かおうとしている。
     村の皆のために。
     それがレオの原動力となっている。
     いつもとは違う方向へ進んでいくレオ。そのせいか、今までで一番距離を伸ばしているようだ。
     油断は禁物である、そう気を引き締めつつも、魔物の姿が全くいないせいか意識が別の方へ逸れてしまっている。
     飽きるほど何度も見てきた森の景色。同じように木々が鬱蒼と茂っているだけだと思っていたが、今のレオはこころが安らいでいるような気がする。
     これほどまで静かな場所は、村では恐らくないものだ。
     これからもこっそり来たいなと思っていた。
     すると、微かに高い音が聞こえてきた。
     レオはそっと剣に手を伸ばし、いつでも抜けるように構える。
     だが、魔物のものとは違うそれは、何か別のものの鳴き声だろうか。たとえば、小さな鳥の囀り。
     危険な森の中に魔物以外のものがいるとは思えない。
     レオは気になってしょうがなくなり、音のする方へ静かにゆっくりと進んでいく。
     目に入る景色は変化を見せないが、音の正体には近付いているようだ。
     一つだけだと思っていたものは、また別の似たようなものも聞こえてきた。
     用心するに越したことはないと、徐々に足音にも気を付ける。
     しばらく進んでいくと、少し先が明るくなってきた。
     木がないのだろうか。
     改めて気を引き締め、レオはその先へと進んでいく。
     そして視界が急にひらけた。陽の光がやけに眩しい。
     可能な限り目を閉じずに周囲を見渡すと、小鳥の姿が目に入った。
     あの音の正体は、小鳥の囀りだった。小鳥たちから同じ音がしている。
     よくよく見ると、小鳥以外にもウサギやリスといった、小さな動物たちがたくさんいる。
     こんな森の奥に、ひっそりと動物たちが棲んでいる。レオは驚きしかなかった。
     その中央は、レオをさらに驚かせた。
     人がいる。
     見たこともないその人は、銀色の長い髪を美しくなびかせている。それはまるで、おとぎ話から出てきたように美しい。
     慈しみ深い笑みは指先に止まらせた小鳥に向けられ、レオの存在には気付いていないようだ。
     正体も分からない存在にもかかわらず、レオの視線はその人に釘付けになって離せなかった。いくらか心臓の鼓動が速く脈打ち、どうしたものかと思ってしまった。
     ふと、ここは森の奥という危険な場所であることを思い出した。今は魔物の姿はないけれど、いつ襲ってくるか分からない。
     レオは目の前の人物に近付いていき、声を掛ける。
    「ねえ」
     突然のことに全身を大きく震わせ、笑顔は一気に消えてしまった。そしてその顔は、恐怖に包まれてレオの方を見た。
     そこまで驚くことはないのに。
     それでもレオは笑みを崩さずに話し続ける。
    「ここは危ないよ。恐ろしい魔物が棲んでいるんだ」
    「えっと、その……」
     震えている声は、すっかりレオにおびえていることを露わにしている。
     同時に、少し低い声が、男であるとレオに分からせた。
     ただ話し掛けているだけなのに、ここまで恐怖される理由が分からない。
     もしかしたら、レオには見えない恐ろしいものが彼には見えているのだろうか。
     それでも、彼がここにいるのは危険しかない。
    「どうしたの?」
     そう言いながらレオが手を伸ばすと、彼は思い切り手を引っ込めた。
    「ねえ!」
     負けじと、ぐい、ともっと手を伸ばす。今にも走って逃げそうな彼の腕をようやく掴んだ。
     触れた部分から伝わる彼の震えは、明らかに恐怖を抱いていることを感じさせる。
     一体何が怖いのだろうか。
     彼の視線はレオに向けられているが、口元を震わせるだけで何も言葉を発しようとしない。
     レオは聞き出したい欲をこらえつつ、じっと彼を見つめる。口元の笑みを保ちつつ。
    「あ、あの……」
     ようやく彼は口を開いた。今にも泣き出しそうなほど声は震え、目元も潤んでしまっている。
    「大丈夫……?」
     これ以上言葉がなく、レオは再び問い掛ける。

     ──続きは実物で!

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