【本文からの抜粋】
「あー、ちっくしょー、負けた!」
「お疲れさん」
「あ、俺にも貸して」
負けたゲームの画面を閉じ、星村は首だけで振り返り中谷の目を見て言う。
「塗ったげるよ」
「ん」
さも当然のように、中谷が星村の唇に自分のリップクリームを塗る。彼らを囲むようにいる仲の良い男子生徒たちは、何事もなく漫画を読み、ジュースを飲んでいる。
(「1・卒業の旅」より)
――――
「愛に対しては適当しないよ、俺は」
「……」
「なーんちゃって?」
綺麗な顔立ちの人の怖い顔は本当に迫力がある。それを自在に操る桜庭は、中谷を安心させるように相好を崩した。
(「2・ここからの一人旅」より)
――――
「そんなに変わっちゃったかな、俺」
「いや、なんていうか、大人の彰ちゃんだなぁって」
「それなら、たつおもそうだよ、大人のたつおって感じがする」
そうかな、と中谷はつぶやいた。それは自分自身への問いかけでもある。高校を卒業してからの 10 年間で、自分はあの頃よりも大人になったのだろうか。
(「3・ここまでの一人旅」より)
――――
【あらすじ】
入学した高校で中谷竜生と星村彰太は出会った。
高校生活の3年間で、とても仲の良い友達となった彼らはいつも二人組でいた。
楽しい高校生活も終わりが近づき、彼らは日帰りの卒業旅行へ出かけた。
教室ではない場所で、卒業後のそれぞれの日々を想像した中谷は、星村がいつの間にか、自分にとって友達よりも大切な存在になっていたと気付く。
しかし、中谷はその想いを胸に隠したまま、高校を卒業した。
大学へ進学した中谷は、中谷のように同性の友達に想いを寄せる男子学生・桜庭拓也の話しを聞いて、星村ともう一度会いたいと思うようになる。
高校を卒業してから10年後の秋の日、中谷は星村と再会を果たして……。
ボーイズでラブだけど、恋とは言いきれない「好き」という気持ちと、育ってゆく愛情のお話しを目指しました。
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