【2】
それ以降、俺とギルとは頻繁に宮殿の中で遭遇することになった。
主には夜に、庭で、厩舎で……どうも待ち伏せをされている気がする。それくらいよくかち合うようになった。
「やあ、マハール。こんばんは。……今日も可愛いね」
飼い葉の上に薄手の絨毯を広げてその上に座り、ギルは今日も俺を厩舎で出迎えた。
いつもどおりのターバンに商人の上着姿。所作には品があり、言葉遣いも丁寧。着ている布もシミひとつ無く厚みがあり……宮殿とはいえその端っこで、厩舎の中で見るにはなんとも浮いている姿だった。
「……そりゃ、どうも。っていうか、あんた暇なのか? 仕事は?」
夜の唯一の楽しみとも言える馬たちとの時間を邪魔されているようで、何となくつっけんどんに返してしまう。
ギルはうーんと唸って、首を傾げて見せる。慣れてよく見ると、ギルは悔しいくらいに男前だった。通った鼻筋に大きめの薄い唇。瞳は緑で切れ長の、穏やかなアーモンドアイだった。年齢はやはり俺より十ほど上の二八だと言った。
「布をね。主には絨毯を扱っているんだけど、全ては持ち運べないから。必要な分だけ下男達が宮殿に直接卸してるんだよ。だから私は身軽でね」
本当なのかどうなのか、確認できないことを言う。
「そうかよ……って、じゃああんたは、宮殿の奥にも入れるくらい偉い商人さんなんだろ? こんなところで何してんだって」
「可愛い君を見てる」
「……そうですか」