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美しの国

  • ち-76 (小説|BL)
  • うつくしのくに
  • KONOAKIRA
  • 書籍|A5
  • 50ページ
  • 500円
  • 高校時代に付き合っていた春高と瑠衣。けれど家庭の複雑さから道を逸れてしまった瑠衣を繋ぎ止めることが出来ずに春高は警官を志し上京、進学する。
    十年後、地元へ配属になった春高はある死体損壊、死体遺棄の重要参考人に瑠衣が挙がっていることを知る。二人は刑事と被疑者として再会し、事件を認めるような言動を繰り返す瑠衣に春高は翻弄され……。
    ※18禁BL小説となります。

    【美しの国/サンプル】


    序章

     遠くで六限目が終了するチャイムの音が鳴っている。  小柳春高は体育倉庫の中で動けずにいた。春高は背が高い。その自分より太く力強い腕の中に抱かれていた。体育着を通して相手の高い体温と力強く打つ鼓動を感じていた。大川瑠衣。同級生のその男の腕に抱かれて春高は身動き一つできないでいた。 「小柳」  低く、既に成人男性の声といっても通るほどに完成された掠れ声が自分の名を呼んだ。 「俺ら、付き合う。そうだろ……?」  一言一言をはっきりと伝えてくる声だった。抱き締めてくる腕はやはり力強くほんのりと汗の匂いがする。 「付き合う……って」  それでも春高は素直に頷けずにいた。男を、同性を好きだという自分をまだ受け入れられずにいたから。けれど腕が、離してくれない。長身の春高を支え、けれど縋りついてくるように腕が離れない。 「小柳ぃ」  腕が緩んで頬を両手で包まれる。目の前に浅黒い肌をした、異国の血が入った彼がいる。鳶色の瞳が力強く見つめてくる。眉が微かに寄った、怒りともとれる表情で彼がこちらを睨んでいる。告白の答えはまるで一つだとでも言うように。 「お、大川……俺は」 「付き合う、だろ?」 「……」 「イエスって言え」  再度身体を抱かれて耳元で囁かれる。心臓がきゅうっと締め付けられる。もう誤魔化せない。この想い……。  頷く前に唇を塞がれた。初めてのキスは砂埃の味がした。

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