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神様を撃ち堕としたいけれど!

  • B-13 (小説|エンタメ・大衆小説)→配置図(eventmesh)
  • かみさまをうちおとしたいけれど!
  • 砂原翠
  • 書籍|B6
  • 142ページ
  • 500円
  • 2022/09/25(日)発行
  • ▼文フリ大阪新刊

    同級生に、神様にされた。

    スクールカースト上位女子高生・高崎澪は地味で冴えないクラスメイト・汐屋慶に告白される。告白を断るつもりだった澪は、汐屋が自分を神様のように「信仰していただけだ」と告げられ激昂する。その信仰を打ち砕くために澪は汐屋を挑発しようとするが──

    【恋と痛みと崇拝の青春小説】


    ◆試し読み

     同級生に、神様にされた。
    「高崎さんが、好きです。付き合ってください」
     手垢も指紋も唾液の飛沫だって付きまくった、ありきたりな告白に、私は思わず顔を顰めた。
     ダサい。ダサすぎる。
     私は脳内で思いっきり蔑んで、目前の垢抜けない男子を見た。
     汐屋慶。重たい前髪に隠されてもはっきり分かるぐらい、濃い眉。双眸には精気がなく、なんだか眠そうで、怠そうな感じがする。
     こいつは高一の春から同じクラスになっただけの、ただの同級生だ。休み時間は一人で本を読んでいるような、私とほとんど絡んだことのない、地味な男子。あろうことか、こいつに放課後の体育館裏に連れだされて、私は今、告白を受けている。
     普通さあ、ある程度仲良くなって、可能性ありそうな感触掴んでから、駄目押しで告白するもんじゃないの? こんな、一か八かみたいな、玉砕覚悟の告白をするなんて、振られにいってるようなものじゃん。
     しかもこいつ、「付き合ってください」って言ったきり、黙りこんでる。
     そういうシンプルさって、お互いをよく見知った関係にこそ効くんじゃないの? 私、あんたのことよく知らないんだけど? 誰? つーか、あんたも私のこと知らんだろ。
     苛立ちを鎮めるように、浅くため息をつく。
     他人から好感を持たれて、告げられることは結構ある。
     でも残念ながら、「好きです」という言葉は、「あなたの味つけが僕の味覚に合いました、もっと食べさせてください」という意味にしか聞こえない。
     それに、思いを伝えるという行動に出られたという事実が、「あなたは僕が食べる権利のある食事です」と宣言されているように感じてしまう。
     憤りと嫌悪。私は、潔癖なのかもしれない。
     しかも、自分でも性格悪いと思うけど、告白を断るのは嫌いじゃない。自分よりも体の大きな男子が、思いを手折られて、私という存在より小さく、情けないものになっていくのは気分がいい。
     私は早々にお断りする心づもりを固めた。
     居心地が悪そうに突っ立っている汐屋を、睥睨する。
    「あのさ」
     苛ついた声を出せば、汐屋はわずかに首元を強張らせる。
    「汐屋はさ、私のこと何も知らないくせに、何をもって好きとかいうわけ?」
     気怠い両目が呆然と瞬く。乾燥した唇が困惑したように、かすかに嘲るように、歪む。
     はあ? 何、こいつ。気持ちわる。
     半身を引いた私に、汐屋は言う。
    「ああ、知らない。君の言う通りだ」
     私は口元を引き攣らせた。日常会話で、「君」なんて気取った二人称を使うやついるんだ。
     汐屋は一人で納得したように微笑む。
    「ずっと、高崎さんに憧れていた。だけど、どうやら君は、俺が思っていた女性とは違ったようだ」
    「は? 何、喋ったら嫌いになったってこと?」
     私が怒りを滲ませて問えば、今度こそ汐屋は堂々と笑った。
    「いや、俺には片思いがお似合いってことだよ」
     幸福そうに、汐屋は頬を緩めている。
    「君が友人と笑ったりはしゃいだりしているのを見ると、清らかな心地がして、自分が浄化されるように思うんだ。ずっと君の幸福が続きますようにと、天に祈りたい気持ちになる。君を傷つけ悲しませるもの全てを、俺が代わってやりたいと思う。君という存在に恥じないよう、背筋を伸ばして生きようと思う。俺はきっと、君を信仰していただけなんだ。だから、これからもそうする」
     気持ちわる!
    「自分勝手……」
     私が呆然と呟けば、汐屋は「よく言われる」と目を細めた。
     つまり、こいつは私に幻想を持っていたことを認めた上で、今後も幻想の私に恋をすると言ってんの?
     ていうか、何が「幸福を祈りたい」だよ、「代わってやりたい」だよ。こいつ、恋を通り越して、愛してると言ってるんじゃないか?
     そんなの、嘘に決まってる!
     私は汐屋をねめつけ、挑発するように唇を持ち上げた。
    「分かった。あんたは勝手にすればいい」
     汐屋がぼんやりと首をかしげる。ああ、苛々する!
    「私は、あんたの欺瞞を暴いてやる」
     人を勝手に神様にしやがって。
     何が、信仰だ。清らか? 浄化? はぁ?
     笑わせんな。
     私を汚すことで、お前が汚れていることを証明しろ。
     影の落ちた体育館裏で、私は両手を握り締めた。土と緑の湿った香り、生ぬるい風、体育館から響く部活動のかけ声、走る振動、床にボールが打ちつけられる音。それら全てが私を追いたて、怒りを燃え上がらせる。
     無償の愛とか、聖人面してんじゃねーよ。
     小さく舌打ちを漏せば、汐屋は困惑したように崩れた笑みを纏う。

     私はこの日、汐屋慶を落とすことに決めた。

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