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溶かせない魔法

  • く-32 (小説|BL)→配置図(eventmesh)
  • とかせないまほう
  • 高梨 來
  • 書籍|A5
  • 20ページ
  • 0円
  • 2017/01/22(日)発行
  • 創作BL│ A5コピー │ 無料配布 │ 17/01/22


    「知ってるよって、言ってもいい?」



    ほどけない体温」番外編。
    心からお互いを求め合い、信じあいたいと思えるようになってからのふたりのお話。
    周くんがすごくたくさんちゅうしてくれたよ、みたいなあれです。笑





    【本文サンプル】


     


     心のありかをたどるように触れられることは、こんなにも苦しくて、こんなにももどかしくて――こんなにも、いとおしくてたまらない。



     指先をくすぐるようなやわらかな感触を感じながら、瞳を細めたままゆるやかに髪をかきあげる。かすかな香りに酔いしれるようにしながら、すり抜けていくそれを掬っては払い、そろりと唇を寄せる。形の良い頭を震わせ、時折もどかしそうに身じろぎをして応えて見せるそんな姿に、言いしれようのないいとおしさはとめどなく滲んでは膨らんでいくばかりだ。

     すこし汗ばんだまえ髪をかきわけ、額に、眉間にかすかな口づけを落とす。引き寄せるような手つきで後ろ髪をくしゃくしゃとなぞりあげながら、瞼に、睫毛に、頬に、鼻に、顎に――次第に降りていくようにゆっくりと吐息をかぶせていきながら、待ち望んでいたかのような唇にようやくそっと自らのそれを重ね合わせ、ゆるやかに上下の唇を食むように触れ、うんと遠慮がちに差し出された舌先をなぞる。

     触れた先から、あまくしびれていくようで――もっと深く溶かしあうように欲情を辿るすべがあることくらいとうの昔に知っているはずなのに、こんな風にやわらかに触れあうことで感じるもどかしさのほうがいまはずっと好ましく感じるのだから、ひどく不思議だ。

     かすかに吐息を重ね合わせるだけの戯れめいた口づけをまえに、ぎこちなく差し出された舌がうんと遠慮がちに唇をなぞる。

     誘われるままにこちらのそれを差し出せば、歓喜に震わされるようになぞりあげる感触がいつか感じたそれよりもずっとやさしく、ずっとあたたかなものにいつしか変わっていることに、今更のように気づかされる。

    「あまね……」

     濡れた瞳が、ひどく頼りなげにじっとこちらを捕らえてくれる。そこにはもう、いつか感じたようなこちらを追いつめるようなあまやかな息苦しさはかけらもありやしない。

    「忍、」

     なだめるように数度肩をなぞりあげ、ゆるやかに息を吐き出す。そうっとかきあげた髪の下から露わになった形のよいやわらかな耳はいつしか赤く染め上げられ、かすかに震えている。

    「いい?」

     こくん、といい子の顔でうなずくのを確かめた後、吐息をかぶせるように唇を寄せ、ゆるやかに舌を這わせるようになぞりあげる。歯を立てないように唇を這わせながら舌を滑らせ、時折遠慮がちに、そろりと吐息をふきかけてやる。

    照れたようにかすなか身じろぎをしながらくすぶった吐息を唇のあいだから漏らすそんな仕草すら、途方もなくいとおしくてたまらない。

     痣になって消えなくなるまですべて残したい。刻みつけることなんて出来ないことを知っているけど、この気持ちがこんなにも確かなことを知ってほしくてたまらないから。

     すこしのびたスエットの襟首から覗いた首筋に舌を這わせながら、加速したもどかしさがいつしか波のようにひたひたとせり上がって胸を包み込んでいくのにただ身を任せる。

     唇を寄せ、ぬるい吐息をふきかけながらスエット越しの背中をゆるやかになぞりあげる。時折びくりと敏感に身を震わせ、背中に回した腕の力が強まることで、言葉よりもなによりも確実に胸のうちを伝えてくれる。

    「忍、服」

     囁くように尋ねれば、こくりとちいさく頷く仕草と共に、かすれた声で言葉が紡がれる。

    「……ぬがせて」

     答える代わりのようにインナーごと手をかけるようにして素肌に触れるこちらをまえに、カーディガンのボタンに指をかけながら忍は答える。

    「ね、周もね?」

     どこかなまめかしさを感じる仕草とは裏腹のいやに子どもじみた笑い顔をまえに、心のうちはぶざまなまでにかき乱されるばかりだ。

     なんでこんな風に笑えるんだろう、こんな自分なんかのまえで。でも、この笑顔がなによりもほしかったのは確かだ。ずっと手に入らないと思っていたものが、こんなにもあっさりと差し出されている。

    「ほら、手あげて」

     子どもみたいに素直に応じて見せる態度をまえに、いつもみたいに乱暴に衣服をはぎ取り、自らのものと共に床の上へと乱暴に放る。途端に外気に触れた肌がひやりと粟立つのをまえに、心許なさを寄せ合うようにきつく肌と肌を引き寄せあう。

     かみ合うようなおうとつもなければ少しもやわらかくもない身体と身体でも、こんな風に互いの体温を重ね合わせればこんなにも心地よい。

    初めてこうした時からずっと知っている途方もない安堵感をまえに、息が詰まるような心地を味わう。

    「……あまね」

     肩口に吹きかけられる生ぬるい吐息に酔いしれるように、ふかぶかと息を吐き出す。こんなにも抱き合ってひとつになりたいのに、距離をおかないとこちらを見つめてくれるまなざしの色を確かめることが出来ない。

     はだかの心と心で向き合うのには適切な距離がいるだなんてひどくあたりまえの、だからこそ気づけなかった大切なことを、忍はちゃんとひとつひとつ、周に教えてくれる。

    高梨來さんのサークル【午前三時の音楽】からの委託作品です。

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