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The Pleasure of Short Story

  • D-33 (小説|短編・掌編・ショートショート)
  • ぷれじゃーおぶしょーとすとーりー
  • 梓野みかん
  • 書籍|新書判
  • 70ページ
  • 300円
  • 2022/6/19(日)発行

  • こたつみかんがマークの短編小説集!


    あちこちに書いていたものを加筆修正した作品に、初出のものを合わせて6編入ってます。
    以下、各話の冒頭です。


    ●友人の結婚披露宴から帰る途中のできごと…「コーヒーが飲みたい」

      ――ああ、コーヒーが飲みたい。
     旧友の結婚披露宴会場から離れ、パンプスをスニーカーに履き替えて、四駆のオフロードカーを駆る、酒の飲めないケイである。
     宴のシメに飲んだ、花嫁のお手製ブレンドフレーバーティーでは、ケイの腹はなんだかどうにもシマらない。まじめに進学と就職を果たし、趣味の料理と裁縫を極めつつテニスを嗜み、どこぞの高原で小さなペンションを営む男に嫁ぐ旧友の姿は、人としてのあるべき正しさに溢れているような気がして、ケイは落ち着かなかった。

    ●北へ帰ろうとしない友人の思惑…「南帰行、膏肓に入る

     koh-koh-koh……
     koh-koh-koh……
    「君、いいかげん今年は帰りたまえよ」
     わたしは、隣で浮かんでいる友人に言った。
     水面から空を仰げば、シベリアをめざす仲間の一群が飛んでいる。V字の隊列を組んで舞い上がり、白い翼を羽ばたかせ、本来ならわたしも同じように飛んでいるはずだった。
     いまは三月。
     ぬるむ季節に備えて、渡り鳥たるわれわれハクチョウは、北へと帰る時期である。
     

    ●引っ越し前夜に届いた、元カレからの葉書…「星はすでに落ちている」

     ゴッホの「星月夜」だな――。
     青と黄色の幻想的なポストカード。
     郵便受けから出した手をくるっと返し、差出人の名前を見て、渡辺カナコは吐きそうになった。
     

    ●ジーマの誘いは、いつも魅力的だ…「フォーマルハウト」

    「今夜十二時、スペースシャトルが町の線路をゆくそうだから見に行かないか」
     そうぼくを誘ったジーマの声がよく通るものだから、クラス全員を誘ったも同然だった。
     スペースシャトルの情報は三分後には学校じゅうに知れわたり、十分後には校区全体を席捲した。放課後にはピクニック用の敷物を運ぶ人の姿で道があふれた。

    ●そこの路地を入ると、先生の家がある…「巡礼」

     そこの路地を入ると、先生のご自宅がある。
     愛猫と書物とちゃぶ台の原稿用紙の世話に明け暮れる、先生のお住まいだ。


    ●二十世紀も末のころ、スニーカー狩りに遭ったわたし…「ゴディバのごとく」

     二十世紀も終わりごろのことだ。
     放課後、委員会を終えて帰ろうとしたわたしが誰もいない玄関で靴箱に手を伸ばすと、そこに靴はなかった。
     狩られた。
     「スニーカー狩り」だ。
     ぼうぜんとするわたしをヨソに、あけっぱなしになった生徒玄関の引き戸の向こうを、稲刈り帰りのコンバインがカタカタと通り過ぎてゆく。香ばしい、乾いた匂いが、夏を残した陽の光にまじって漂い、この時期は校内にまで入りこむ。
     ここはそんな、田舎の女子高。
     


    こたつ読書のハーフタイムに。

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