Twitterで呟いていた140字掌編のより抜きまとめ本。学園恋愛もの。
三度の飯より虫と『彼女』が好きな『彼』と、クラスメイトで『彼』にべた惚れの『彼女』。
盛大なのろけと虫蘊蓄の140字集+掌編「キタキチョウ」を掲載。
「2頭目」のとおり第2集ですが、これだけで読んでも全く支障ありません。
↓ 本文抜粋です
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雨と風が弱まるたび、その僅かな合間にアブラゼミの声がする。
「台風が過ぎたら秋なのに」
「諦めてないんだろ」
「何を?」
「俺が諦めかけてるもの」
彼女が首を傾げる。
あれはオスがメスを呼ぶ声だ。まだ恋をしたくて鳴いているのだ。
「頑張ってみたら?」
「君が応えてくれるなら」
* * * * * *
家族旅行のお土産、と彼がくれたのはストラップ。少しいびつなトンボ玉は、彼が好きな青みがかった緑色だ。
「もしかして手作り?」
「やっぱ分かる?」
彼は照れ臭そうに頭を掻く。
トンボ大好き、特にオニヤンマが大好き、そしてオニヤンマの眼鏡の色が大好き。証拠は揃っているのに。