「俺さ、子どものころ、一人で寝るのが怖かったんだ」
たくさん愛し合ったあと、久秀さんはおもむろにそんな話を始めた。
「なんやの、急に」
彼のピロートークにしては、なかなか可愛らしいものだ。オレにはその意図がわからずについ、胡乱げな目を向けてしまった。
そんなオレの反応を気にしたふうもなく、久秀さんは照れくさそうに笑って、オレの髪を撫でる。
「毎晩怖い夢を見てさ、もう寝るのが怖くて怖くて……。よく泣いて両親を困らせたっけなぁ」
しみじみと思い出話をする久秀さんに、どんな反応をしていいかわからない。
いつもなら、彼はたくさんの愛の言葉をくれる。その愛の言葉を聞きながら、眠りに落ちるのが好きなのだ。
「今も一人で寝るのが怖い?」
そういえば、オレが眠ったあと久秀さんはどうしているのだろう。
オレが先に寝落ちて、目が覚めると久秀さんはすでに起きていて「おはよう」と微笑みと共に額にキスをしてくる。
久秀さんの寝顔なんて見たことなくて、もしかしたらずっと起きているのかもしれない。
「寝るのが怖いから、ずっと起きてんの?」
「まさか。ちゃんと寝てるよ」
まるで、オレを子ども扱いするかのような手つきで、また髪を撫でてくる。
「だって、久秀さんオレより先に起きてるやんか」
「そりゃ、お前。お姫様が夢の世界から帰ってくるのを出迎えるのは王子様の役目だろ」
「えっらい老けた王子様やな」
そうからかえば、久秀さんは指でオレのおでこをつっついてきた。
「久秀さんはどう考えても王子様ってガラやないやろ。どっちかっちゅーと暗殺者やな」
「あのなぁ、俺だって傷付くんだぞ」
さらにからかってやると、久秀さんはオレの上に乗っかってきて、首筋や耳を噛んできた。
むず痒いその感触に身を捩る。しかし久秀さんは許してくれそうにない。
こちらのブースもいかがですか? (β)
maison shima IZUMI TANIZAKI 英智舎 言の葉集 INTERPLAY 多花巣うみ さよなら氷砂糖 スパイス26号 ゆずりは食堂 Albino