遊園地とクレインとは、毎度テーマを設定し、テーマに沿って四人の書き手が物語をつむぐ、文芸誌です。号数はありますが、個々で問題なく読むことができます。
第8号のお題は「けもの」 己が内側に猛る種々の「けもの」を抱えた、4編の物語。
『青藍王と八番目の華燭』 松井駒子
焔抱くシュスクダは寺院によって栄えた街だ。その最下級、紺前掛けの僧兵でありながら、最強の遺華遣いであるハチは寺院に疎まれ、カンバルの青狗退治を命じられる。しかし辿り着いた先で、青狗は既に死んでいて――青きけだものと、孤高なる少女。ふたりが紡ぐ、異能継承ファンタジー。
『還らぬ聲になく獣』 上矢竜暉
人は、生まれながらにして身の内に獣を棲まわせている。もう一人の己とも呼べる獣は十人十色。激しく吠えるものもあれば、ひたすらに潜んで最期の最期まで身を隠すものもいる。獣に飲まれ、時代はゆっくりと動き始める、始まりの物語。
『ジャメルの獣』 倉田希一
頭の上の大きな耳。スカートの上部から生える長いしっぽ。それからおまけに、全身を覆うブルーの短毛。獣人(ワーキャット)と呼ばれる種の彼女と、町外れの森の近くに住む天涯孤独の青年。ゆっくりと互いのことを知りゆくふたり。けれどボタンをひとつ、かけちがえたままに。それが導く結末とは。
『指切り』 唯月海理
ひとは、こころにけものを飼っている。それを式として呼び出し「獲物」を狩る人々の住まう、隠れ里。そこへやってきた異国の男。
その男は、この里に災厄という名の目覚めをもたらす者であった。