夜雨に流されなかった桜の花びらが、陽光に照らされてはらはらと舞っている。
薄紅の絨毯を従えた八重桜を遠くに眺め、へし切長谷部は隣りに臥したままの歌仙兼定の髪を一筋すくいとる。白黒の濃淡にしずむ寝室で藤紫の髪だけがひときわ艶やかだ。甘く薫るやわらかい、花びらのような孤を描くそれを、指に絡めては外して戯れる。
昨夜「汚れ仕事」を終えてから、この美麗な打刀を人間には出来ないやり方で抱いた。契りを交わして一年と数か月、人真似の好きな無垢な刀にひとのする痴戯を教え込んできたが、それを終いにした夜だった。
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