こちらのアイテムは2017/11/23(木)開催・第二十五回文学フリマ東京にて入手できます。
くわしくは第二十五回文学フリマ東京公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

海柘榴

  • Fホール(2F) | ウ-65 (小説|SF)
  • うみざくろ
  • 磯崎愛・うさうらら
  • 書籍|A5
  • 16ページ
  • 200円
  • 北陸アンソロ収録にいただいた「海柘榴(うみざくろ)」を再録した和綴じの手製本です。
    コミックとテキストで福井県小浜を舞台に、八百比丘尼(人魚)伝説を絡めた夢使い大桑糺の登場する物語です。 海と陸のはざま、大陸と都の通過地点である小浜で、生と死を見つめるおはなしでもあります。

    表紙 白画用紙に赤の奉書紙貼り合わせ   
    本文紙 大直 簾の目

    冒頭文

    あれは小学校四年の夏休みのことだ。

    僕にとって小浜の祖父母の家は、なによりも二つ年上の従兄の勝くんと遊べる場所だった。 

    勝くんは浴衣を着て縁側の籐椅子に腰かけて本を読んでいた。僕を見ると眩しそうに目を細めた。

    蜩が啼くころになると、勝くんは僕を連れて万屋へ行く。そのままアイスを片手にすぐ近くの浜辺へと向かう。遠浅の海は波が穏やかでやさしい顔をしている。明日は朝から泳ぐよと勝くんがほほえんだ。

    勝くんは遠泳が得意で市の大会で優勝したこともあった。夕食後、お勉強も一番なんでしょうと僕の母親が羨ましげにつぶやいた。うちのはどうしようもなくてと零す。勝くんのお母さんが、徹くんは明るくて素直でいいじゃありませんかと言ってくれた。僕はそっと勝くんの横顔を盗み見た。まぶたの静脈が透けるように青く、色白の肌はみっしりと詰んでいた。

    そのときふいに耳鳴りがするように、この世界の音が遠ざかっていった。僕は誰かが亡くなったのだとわかった。電話が鳴る前にそんなふうになるといつもその知らせだったから。僕は無邪気に尋ねた。

    すると、そこにいた大人たちがみな、ぎょっとした顔で僕を見た。

    翌日、ああいうのは口にしないほうがいいと勝くんが言った。踝で潮の引いていくときの肌寒さに似た静寂を、僕たちはあの浜辺で味わった。

    僕は、勝くんが好きだった……―――

     

     

     

     





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