あれは小学校四年の夏休みのことだ。
僕にとって小浜の祖父母の家は、なによりも二つ年上の従兄の勝くんと遊べる場所だった。
勝くんは浴衣を着て縁側の籐椅子に腰かけて本を読んでいた。僕を見ると眩しそうに目を細めた。
蜩が啼くころになると、勝くんは僕を連れて万屋へ行く。そのままアイスを片手にすぐ近くの浜辺へと向かう。遠浅の海は波が穏やかでやさしい顔をしている。明日は朝から泳ぐよと勝くんがほほえんだ。
勝くんは遠泳が得意で市の大会で優勝したこともあった。夕食後、お勉強も一番なんでしょうと僕の母親が羨ましげにつぶやいた。うちのはどうしようもなくてと零す。勝くんのお母さんが、徹くんは明るくて素直でいいじゃありませんかと言ってくれた。僕はそっと勝くんの横顔を盗み見た。まぶたの静脈が透けるように青く、色白の肌はみっしりと詰んでいた。
そのときふいに耳鳴りがするように、この世界の音が遠ざかっていった。僕は誰かが亡くなったのだとわかった。電話が鳴る前にそんなふうになるといつもその知らせだったから。僕は無邪気に尋ねた。
すると、そこにいた大人たちがみな、ぎょっとした顔で僕を見た。
翌日、ああいうのは口にしないほうがいいと勝くんが言った。踝で潮の引いていくときの肌寒さに似た静寂を、僕たちはあの浜辺で味わった。
僕は、勝くんが好きだった……―――