こちらのアイテムは2016/11/23(水)開催・第二十三回文学フリマ東京にて入手できます。
くわしくは第二十三回文学フリマ東京公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

だから、彼はニートになりたい

  • Eホール(1F) | B-64 (小説|エンタメ・大衆小説)
  • だからかれはにとになりたい
  • 十八番
  • 書籍|A5
  • 200円
  • *あらすじ
    若くして退役した元軍人のヤン・ブックは戦後、年金暮らしを満喫していた。
    しかし、平和になったはずの町で起きる連続誘拐。
    生還者に拷問痕があったことから、過去の経歴を買われたヤンは調査に駆り出される。

    どんな残虐なことも平気でできた。
    「だって、それが仕事だから」

    初出 第22回文学フリマ

    *冒頭サンプル

    1.

     

     悪い夢を見た。痛みと悲鳴と寒さばかりの夢。

     ぼんやりとした意識は温かくて柔らかな布団の中に包まれている。夢が夢であることを確認した俺は再び眠りに落ちる。

    「こら。起きなさい」

     聞くのも痛々しい悲鳴ではなく、ここちよいソプラノボイスだった。しかし、微睡の中にあっては一切の音声は騒音にすぎない。

     俺は布団を頭までかぶる。

    「起きなさいってば」

     布団を強引に引きはがされた。唐突に全身が外気にさらされる。

     非情なる略奪者は枕元で仁王立ちになっていた。

     略奪者の名前はコロナ・クーノ。俺の同棲相手だ。なかなか整った顔立ちをしていて、どこにいっても概ね好意的に迎えられる明るい性格をしている。元軍人のダメ男と同棲している点以外は、健康と健全の象徴のような女性だ。

     しかし、今は敵だ。

    「うう……ひどい。こんな悲劇があっていいのか……」

     体を起こすと、ひどい頭痛がした。早速、布団へ倒れ込みたくなる。

    「またこんなに飲んで。悲しいのはこっちよ」

     コロナはベッドの周囲に散らばった酒瓶を片付け始めた。甲斐甲斐しく働く姿が小動物的で愛らしいが、今は敵だ。

     俺はコロナの意識が酒瓶に逸れた隙に布団を取り戻す。

    「ああ、もう」

    「んん……時間はいいのか?」

    「しまった。私、もう行くから。ちゃんと職安行ってよね」

     コロナは慌てた様子で出かけていった。

     俺は再び布団に潜り込む。

    「ふふふ。働いてなどいるから隙ができるのだよ」

     そして、俺は眠りについた。

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