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体再生法

  • Eホール(1F) | B-64 (小説|エンタメ・大衆小説)
  • からださいせいほう
  • 十八番
  • 書籍|A5
  • 2015/11/23(月)発行
  • *あらすじ
    寿命以外で死んだ人間をクローニングと記憶の移植で蘇らせて、すべての人間が天寿をまっとうできるようになった時代。
    ある男は特殊な事情により、死んでから50年後に蘇ってしまう。
    様変わりした世界に男は何を思うのか?

    そうは言っても―――

    「どうせ生き返るんだろ?」

    初出 第21回文学フリマ東京

    *サンプル

    「体再生法……ああ、そういえば、そんな法律が最近できたとか」

    「そういえばって……五十年前の人の認識はそんなだったと聞きますが……」

    「五十年? おい。何の話だ?」

    「順を追って説明しましょう」

     田中花子は体再生法の説明から始めた。知っている話ではあったが、認識のすり合わせとしては役にたった。

     事の始まりは、脳内の情報を完全に電子化することに成功したことだった。

     そして、人体クローニングと、培養液によるクローンの成長の調整が可能になったこと。

     この三つの技術がこの法律を成立させた。

     ある人が死んだとする。そうしたら、予め抽出して置いたその人の記憶を、やはり予め作っておいたクローンをその人が死んだ時点まで成長させて記憶をインストールする。

     そうすることで、死んだ人間を蘇らせる。

     ただし、蘇らせるのは、病死や外傷による死人のみ。老衰など、寿命とされる者の場合は除外される。

     これが体再生法の概要だ。

    「平和ボケに思えるだろうけど、正直ピンとこなかった。結局、不死身になるわけではないんだし」

    「皆さん、そんな認識だと思いますよ」

     例えば、しばらく会っていない友人が一度死んで蘇ったとしよう。

     一見重大事の様だが、自分の知らないところで死んで、蘇ってきたとして、最後に会った時と変わらない姿を見せてくれるんだ。

    『やあ、実は合わない間に一度死んで蘇ったんだよ』

     と言われても―――

    『へえ、大変だったね』

     としか、言いようがない。

    それでいて、祖父母の葬式なんかは、法案成立前と同じように行われるのだから、ありがたみなど沸きようもないというわけだ。

    「話の流れからすると、俺も一回死んで蘇ったのか。まるで実感がない」

     死の間際の記憶がないこともあるが、生きていることは当たり前のことで今日もそれが続いているだけなのだ。

     ありがたみどころか、実感もない。

    「あなたの場合いろいろ面倒なことになっているので、すぐに実感できると思いますけど」

    「そうだ。五十年前ってのはなんだ? 体再生法ができたのは最近のはずだぞ」

    「体再生法における行方不明者の扱いって覚えてます?」

    「えっと、とりあえず、再生はされないとか」

     津波だなんだと、明らかに死んでいる状況でも死体が発見されなければ行方不明者扱い。

     そして、行方不明の間は再生が行われない。万が一、生存していた場合に大変なことになるからだ。その絡みで、長期による行方不明者の死亡認定の期間は無期限になった。

    「合ってますよ。つまりあなたは長い間、行方不明だったのです」

    「そうか。登山に出かけて、遭難したのか……」

     発見されなければ、再生されなかったのだから悪運が強かったわけだ。

    「あ、でも、これからどう生活すればいいんだ?」

     家も、仕事も、五十年も放置して、元には戻れない。世間の様子も変わっているだろうし、しばらくは生活苦に違いない。

    「それなら大丈夫ですよ。いろいろ特例ですし、普通に生活保護が出ます」

    「なら、いいけど……えっと、これからどうしよう……」

    「とりあえず、こちらで用意したマンションまでご案内しますよ」

     いつまでも、役場の中では落ち着かないのでありがたい話だった。

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