君と僕を繋ぐのは、この感覚だった。
空想カクテル最新刊『Feel』 ━━『五感』をテーマにした短編集。
視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚……人に備わる“五つ“の感覚。 『五感』を通して語られる、五通りの物語。
◆不可視性フィルム
カメラを愛する女子中学生、真帆。彼女の覗くファインダーの向こうには父の友人、樹がいる。 凡庸な父とは不釣り合いな程に美しく優しい樹。カメラマンの彼と過ごす、二人だけの時間が彼女にとっては特別で……? 四角く切り取られた世界の向こうに、少女は何を“視る”か。
◆融氷を聴く
天使の如き容貌で、天使の如く感情が希薄な美少年、冬希。変わり映えの無い彼の日常に訪れた転機。 それは、アーティストの叔母から押し付けられた一本のベースだった。 想いと音を重ねたその先に、少年は何を"聴く"か。
◆匂い立つ季節
雨の中、誰もいないゴミ捨て場で感じた甘い香り。芳香に魅せられた男は、匂いの先へ妄想を膨らませていく。そんな中、同僚の女性から似たような香りがすることに気が付いて…? 一瞬の邂逅。鼻先を掠めたソレを求め、男は理想を"嗅ぐ"。
◆陽炎に触れる
生まれた時から共に在る美しい兄。そんな兄へと向ける燻った感情。信仰にも似た行き場の無い激情を抱え、彷徨える男が辿り着いたのは、一風変わった"バー"だった。 決して満たされぬ飢えと乾き。その果てで、男は確かにソレに"触れる"。
◆カルーアミルクをお願い
男友達と二人きりの食事会に向かう、のん。タイトスカートで可愛らしく整えた姿は今宵も注目の的。だが、注文を済ませた"彼"の目の前に置かれたのは、甘いカルーアミルクで……? 白と黒、男と女、グラスの中で混ざり合う酒の味。"舌に残る"は甘さか、それとも。
視界、音、香り、温度、味。 これは、貴方の「生」へと訴えかける物語。
その結末はどうか あなた自身で、感じて?