エフエム岩手自主制作番組「小さな童話館」作者
【作者より皆さまへ】
時代小説「峠越え」が刊行されるまで
まさか私が時代小説を書くことになるなんて、夢にも思いませんでした。
エフエム岩手の番組「小さな童話館」で放送する作品に応募してみないかと、友人に誘われたのが物を書く始まりでした。
長く続いた放送番組が終了して、その時のメンバーで「もりおか童話の会」という文芸サークルを立ち上げました。「小さな童話館」の時から指導して下さった作家の須知徳平先生を講師に迎えての結成でした。
毎月、例会を開きましたが先生の指導のもと、1人の作品の発表は原稿用紙数十枚程度でした。
「峠越え」を書くきっかけは、巳(み)年の1月の書くテーマが「蛇」と決まったことからでした。生身の蛇を思い浮かべた私は、困ったなと思いました。早世した姉が巳年だったことに気付き、蛇ではなく、巳(み)と考えたら何か浮かんでくるかもしれないと考えました。
テーマが出されたのが巳年の前年の辰年12月だったので休暇中に高島易断の暦を読んでみました。そこには巳年生まれの女性の特徴が記されていました。エネルギッシュで人を惹きつける魅力があり、努力家で技芸に優れている等、長所が書かれてありました。
昔、姉夫婦と鎌倉山を散策し、銭洗弁財天でお金を洗った記憶がよみがえりました。あの時、弁財天の御神体は体が蛇で頭は人の形をしていると説明を受けました。七福神の弁天様は福神の中で紅一点の美人なのに、体が蛇とは不思議だなと思ったものです。しかしインドでは弁天様は川・水の神様でヘビも水の遣いと知って納得しました。
その思い出をたどり現代の童話にしてみよう、としたものの難しく、信仰心の厚かった江戸時代を舞台に書いてみたらどうだろう、としたのが時代小説を書くきっかけでした。
主人公は巳年生まれ(辛巳(かのとみ)・文政4年・1821年)の女の子です。そこから少しずつ物語が創られていきました。白蛇は縁を結んでくれるものとして作中に書き込みました。書き終えた時、須知先生から投稿を勧められ、題名を「峠越え」として『北の文学』に投稿しました。そうしたら、思いがけず入選することができました。大変うれしかったです。
その後も須知先生から、主人公を育てるつもりで書き続けなさい、と勧められて二話・三話・四話・五話・六話と主人公が老女になるまで書いてしまいました。
単行本にしたら、と皆から勧められましたがしばらくの間は愚図愚図して発行できませんでした。出版しようかな、と思ったのは、母が百歳で亡くなってからです。この本を読んでひとりでも喜んでくれるならそれで良いと思ったからです。
発行の際にはたくさんの人達にお世話になりました。盛岡出版コミュニティの栃内正行氏、もりおか童話の会の講師の小原光衛氏、作家も松田十刻氏、画家のさいとうゆきこ氏、そして長年支え続けてくれた、もりおか童話の会の元代表菊池尋子氏のおかげで出版の完成を見ることができました。心より感謝申し上げます。
「峠越え」 著者 浅沼誠子
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