純愛風青春ホラー小説
前回の事件で近づいた遠野十字と別田利子。
文化祭が近づく学園生活に怪しげな影が忍び寄る。
(本文より一部抜粋)
我が校の文化祭の出し物は大きく分けて3つに分かれる。一つは各クラスがそれぞれの教室で行う展示・物販。これは義務でもある。俺達のショーカフェもこれにあたる。二つ目は体育館で行う演劇・演奏。三つ目は校舎外にテントを張って行われる物販。この辺りは部活や個人でも申請可能。俺は部活をしていないし有志でやりたいこともないため、本来ならクラスの出し物さえ適当に参加していれば後は他の出し物を冷かして体育館で演奏にノっちゃったりして楽しく過ごせるはずなのだ、本来なら。
だが同じクラスのはずの別田の姿が見えないのだ。ただ休んでいるわけではない。担当はしっかりとこなしているらしいが、給仕担当の俺とすれ違うこともない。
「何かの怪奇現象なのかこれは?」
「いや、ただ遠野が女子たちにストーカーとしてブロックされているだけだろう」
次の舞台を控えたダンサー鳥山が答える。
「そう言えば遠野、前に俺が大渓のことを好きだとか言ってただろ?」
「……言ったかな」
「言ったんだよ。だから気になって大渓のことを見るようになったんだけど」
鳥山は意外と単純な男だった。
「大渓やっぱりやばいかもしれん」
「やばい?」
「たまに思いつめたような顔して別田のこと見てるからさぁ」
確かにリーダー気質で一人でしょい込みやすいから、別田の孤立も勝手に気に病んでいたかもしれない。
「だけど、別田は普通だろ」
「ああ、別田は特に孤立しても気にしないし、お前のおかげで逆に女子たちの反感もかってない」
それはよかった、涙が出るほどに。
「そういえば大渓はどこだ?」
俺がバックヤードをのぞき込むとちょうど提供用のチョコレートをつまみ食いしている赤野と目が遭った。
「ちゃ、ちゃんとお金払うわよ!」
ぜひそうしてくれ。
「赤野と大渓って同じ時間の当番じゃなかったか?」
「あー、それなんだけどね、なんか大渓ちゃん気分が悪いとか言ってちょこっと来ただけでどっか行っちゃったんだよね。代わりの子、連れてきてくれるといいんだけど」
「気分悪いのにどこかに行ったのか?」
と鳥山。
「俺、探してくる」
二人の返事を聞かずに走りだした。上手くは言えないが、嫌な予感がする。俺の妖怪アンテナがビンビン反応していた。
いつもの屋上から下界を見下ろす。大渓は女としてはデカいからわかりやすいと思ったが、見つからない。その代わりに本日完全にロミジュリ状態だった俺のジュリエットが屋台のテントをぬって校舎に歩いてくるのが見えた。俺は急いで階段を駆け下りた。屋上から見ただけだが、別田は屋台を見るでもなくまっすぐ校舎に向かっている。その姿は古墳公園で見たあの時の別田を思わせた。
途中、二階で騒然とした場面に出くわした。足を抑えて蹲る男子がいる。血が流れていた。
(続きは本誌で)