本稿は、筆者が1989年に三浦雅士氏の影響下で執筆した、初の比較的長い文章である。「走れメロス」を題材に、一般に称揚される「信実」や友情という道徳的解釈に疑問を呈する。メロスが間に合ったのは偶然や体力によるもので、心の勝利ではないと指摘。また、メロスの利己主義的な思考を批判し、暴君ディオニスの方が「人を信じられるか」という根源的な問いに正直に向き合っていると考察する。結論として、「走れメロス」の魅力は文体の美事さと読者を感動させる力にあり、道徳や思想的な意味は、単なる自己満足や人間に必要とされたフィクションであると論じている。
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