マイアミに着いたのは深夜一時過ぎだった。予約していたホテルに遅くなったことを詫びチェックインを済ませ、荷物を運んでくれたボーイに時差ボケでまだ眠くもないことを告げると、近くのクラブを薦められた。マイアミは眠らない街だ。クラブなど行ったことはないけれど郷に入っては郷に従えという先人の教えもあるし、そうしようかなと答えると、ボーイは「スーツはお薦めしませんよ」と微笑んだ。たしかにこの場所でスーツは無粋だったね、とボーイにチップを渡した。
部屋で薄いシャツと短パンに着替えて、ホテルを抜け出す。
この時間でも気温は二十五度を超えているが、湿度が低く、潮風が心地よい。ライトアップされたショッピングモールは昔に観た映画のようで、なんとはなしに治安が悪そうだと失礼なことを考えながら歩いていると、パブのテラス席で飲んでいた酔っ払いに「一緒に飲まないか」と声をかけられた。断ると、「なら一緒に踊ろうか」と酔っぱらいはゲラゲラと笑い、ユラユラと踊る。それもまた映画のようですこしおかしかったが、やはり怖かったので早足で逃げた。