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絡繰人形劇作家ユリシーズと彼を愛した悪魔

  • ケ-11 (小説|ファンタジー・幻想文学)
  • からくりにんぎょうげきさっかゆりしーずとかれをあいしたあくま
  • ひゐ
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 100ページ
  • 500円
  • https://www.pixiv.net/novel/s…
  • 2021/11/6(土)発行
  • 天才絡繰人形劇作家と、天使にはなれない悪魔の黒猫の、友情と真実。

    「さあ――最高の悲劇を!」
    『電氣』の街トルメリア。そこにはかつて、ユリシーズという天才絡繰人形劇作家がいた。彼は、その恐ろしいほどの才能に「悪魔と契約したんだ」と噂されるほどの人物だった。事実、彼には悪魔がいた。悪魔の名前はカネレ。黒猫の姿をした、老いた悪魔だった。偶然にもユリシーズに助けられたカネレは、彼と彼の劇を気に入り、一つ悪魔の力を使って手伝ったのだった。その結果、ユリシーズは天才絡繰人形劇作家として人生を歩み始めた。
    けれども、今の時代に伝わる彼のお話は間違いなく悲劇。
    ――恋人ができるものの、その恋人は悪魔に惨殺され、ユリシーズ自身も悪魔による火事に巻き込まれて死んだ。
    これは天才絡繰人形劇作家の、真実の物語。ユリシーズと、彼を愛した悪魔カネレの物語。


    ======小説冒頭サンプル======

     昔、昔。『電氣』の街トルメリアに、ユリシーズという男がいました。
     彼は、誰もが知る天才絡繰人形劇作家。
     彼が作り上げた絡繰人形は、目が眩むほどの美しさを持ち。
     彼が組み立てた絡繰はまさに魔法。
     そして彼の行う絡繰人形劇は美しい世界を作りあげ。
     作り上げた世界が壊れゆく悲劇は、儚くも人の心を掴んで離さない。
     もはやユリシーズは神でした。信者と呼ぶべきファンも多く、彼を崇め奉っていました。
     また恐ろしいほどの才能に、彼を恐れる人々もいました。
    「ユリシーズは、悪魔と契約したんだ。あれは悪魔の力によるものなんだ」
     一歩入れば暗い裏路地で、彼らはひそひそと言います。
    「あいつの近くに、よく黒猫がいるだろう? そいつがきっと、悪魔なんだ」
     まさに歴史に残る人物となり得たユリシーズでしたが、ある日、彼に恋人ができました。
     それに伴い、彼の絡繰人形劇作家としての活動は目に見えて減りました。
     新しく作り上げた作品にも、以前の作品にあった輝きはありません。
     恋人の存在が、ユリシーズの輝きを曇らせたのです。
     けれども、その恋人はある日死んでしまいました。
     暗い夜。ナイフで何度も刺されて。
     そして人々は噂します。
    「悪魔の仕業に違いない」
     その後、ユリシーズ自身も、劇場の火事に巻き込まれ死んでしまいました。
    「悪魔が彼の裏切りに怒ったんだ」
     焼け跡では、夜になれば『劇演奏装置』を操る音が響いていたと言われています。
    「悪魔がユリシーズに、人形劇を続けさせているんだ」
     これは恐ろしい物語。これは一つの悲劇。
     しかし誰もが知っているお話です。
     『電氣』の街トルメリアに住むのなら、知らないわけがない昔話。いまでは演劇にも、人形劇にもされる物語です。それももはやありふれた題材。つまらない話。
     そして――誰も真相を知らない物語。

     これから語られるのは、ユリシーズの真実の物語。
     ユリシーズと、彼を愛した悪魔の物語。


     * * * 


     いまの世に伝わるユリシーズの物語には、嘘の部分と、本当の部分があります。
     「悪魔と契約していた」というのは、半分は嘘。半分は本当。
     契約はしていなかったものの、ある悪魔が、ユリシーズを「神」とも呼ばれる絡繰人形劇作家にしました。
     そもそもユリシーズとは、どんな人物であったのか。
     信者すらもできるほどの才能を持った人物は、果たして何者だったのか。
     簡単に言ってしまえば、彼は確かに才能を持った人間でしたが、それだけの、地味な青年でした。
     神々しさなんて、全くない見た目。茶色の髪は少し伸びていて常に乱れたまま。同じく茶色の瞳にも、才能の欠片のような輝きは見えず、目の下にはうっすらと隈があります。身長も高くなく、身体は痩せ気味で、体格もいいわけではありませんでした。
     つまりユリシーズとは、はっきり言って、間違いなく「平凡な青年」だったのです。生まれこそ良家のため、身に着けているものは決して安くはなかったものの、街を歩けば周囲に溶け込み、その存在は消えてしまうような人物でした。
     そして絡繰人形劇作家としての才能はあったものの、全く日の目を見ない作家でした。
     ユリシーズは、役者一家の次男として生まれました。父は威厳を纏った男。母は優美を体現したような女。演劇界の牽引はもう若手に託しましたが、それでもかつては著名な役者だった二人です。
     そしてユリシーズの兄は、まさにいまを輝く役者でした。その麗しくも力強い姿。時に激しく狂い、時に優雅に舞うような演技。皆を魅了した役者です。
     一方ユリシーズは、彼も最初は役者として教育されましたが、てんでその才能がなかったのです。気が弱かったため人前に出るのを恥ずかしがり、台詞は憶えられない。演技は壊れた絡繰人形の方がまだまし。何よりも「何かになりきること」を「嘘をつくこと」だと感じ、自分以外の何者にもなれない。両親はなんとか役者としての才能を見出そうとしましたが、やがて彼に出来損ないの烙印を押して見捨てました。
     両親にごみとされたことを、ユリシーズは決して恨みませんでした。何故なら、役者として様々なことを勉強する中で「絡繰人形劇」に出会ったからです。
     絡繰人形を使った劇。それは人と同じ大きさの美しい人形が織りなす物語。『劇演奏装置』と呼ばれる装置の鍵盤を押し、まさに演奏するように人形達を操り作り上げる世界。その美しさと技術、奥深さに、ユリシーズはすっかり熱中してしまいました。そして絡繰人形劇作家となるべく、造形を学び、絡繰を知り、物語を考えるようになったのです。
     ところが、前にも言った通り、ユリシーズは才能こそありましたが、日の目を見ない作家でした。運のなさもありましたが、控えめで気弱な性格が災いしたこともありました。
     大きな劇場で公演する機会があれば、その才能に気付く人がいたかもしれません。しかしそんな機会に恵まれることもなく、ユリシーズ自身で売り込みに行くこともなく、では彼はどこにいたのかと言うと、彼は裏路地にある小さな劇場にいました。まだ著名な作家でない頃、ユリシーズはこの小さくて古くて汚くて、おまけにちょっと嫌な臭いもする劇場で、自分の求める美と幻想のため、日夜活動していたのです。
     観客はいましたが疎ら。そして彼らはユリシーズの才能に気付くほどの目を持ちません。劇場の管理人も、酒が売れて稼げればそれでいいというだけの人間。そもそも「劇場」といっても、そこは酒場と何ら変わりない「劇場もどき」だったのです。絡繰人形劇は添え物に過ぎず、ここに来る大半の人間は、酒を求めてやって来ていたのでした。
     そんな場所に、才能ある青年が一人いたわけです。もしも絡繰人形劇作家の神様がいたのなら、周りの人間の無能さに絶望しただけではなく、自身の才能を腐らせているユリシーズに激怒したかもしれません。
     しかしそんな神様は存在せず。
     代わりにいたのが、悪魔でした。
     ある日ユリシーズは、偶然悪魔に出会ってしまったのです。
    ====================

    ※ピクシブでのサンプルやPDF版サンプルでは、約2万1千字分を読むことができます。



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