新人の居着かない職場、家に帰れば腑抜けた父。
橋野今日子は日常に閉塞感を抱きながら、
変化を望む気持ちすら見失っていた。
そこに現れた新人派遣社員の矢木久留子。
今日子は教育を任されながら、どうせすぐに辞めると思っていた。
むしろこんな職場、辞めた方がいいよ、とまで思っていた。
しかし、彼女のたったひとつの行動が変革をもたらした。
職場にとどまらず、多くのものを変えてしまった。
『私が気づかなかっただけで、久留子と出会ったときにはもう、知らず識らずと私は穴の向こうを見ていたのかもしれない。粘膜の壁にぽっかりと、いつあいたかも知れぬ穴から外を覗いて、出ようと思えばいつだって出られるくらいに身を乗り出して、しかしずっと内に留まったまま、見たことのない光景を見続けていた。私のそんな認識は、本当であるか。私には知る必要があった。誰の話でもない。私の話なのだ。それを私は確認したいのである』
久留子の完遂した呪詛は、いったい何をもたらしたのか。
久留子の行為は何が特別であったのか。
久留子の行為は、どこまで久留子のものであったか。
矢木久留子を通して見つめる自分、つまりはあなた自身の物語。
こちらのブースもいかがですか? (β)
大阪大学感傷マゾ研究会 エリーツ 代わりに読む人 SF文学振興会 犬と街灯 斜線堂有紀 双子のライオン堂出版部 中村庄八商店 滝口悠生と植本一子 書肆侃侃房