こちらのアイテムは2021/5/16(日)開催・第三十二回文学フリマ東京にて入手できます。
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長崎外海〜五島列島

  • ソ-25〜26 (評論・研究|文芸批評)→配置図(eventmesh)
  • ながさきそとめごとうれっとう
  • サトミ セキ
  • 書籍|A5
  • 48ページ
  • 700円
  • 2021/05/16(日)発行

  • 〈目次〉

    最初の外海2015

    • 偶然が重なり外海へ
    • 外海歴史民俗資料館で見たもの
    • 万能のド・ロ神父
    • 旧出津救助院
    • ド・ロ神父来日の頃の長崎
    • 横浜時代のド・ロ神父

    五島列島2020

    • 五島列島を旅した理由
    • 福江島  堂崎教会堂
    • 福江島  慈恵院廃墟~旧木の口キリシタン墓地
    • 中通島  桐教会堂の銅像碑文
    • 中通島から頭ケ島天主堂へ
    • 鉄川与助の鉋

    二度目の外海2020

    • 潜伏キリシタン時代の遺跡を巡る
    • 伝道師バスチャン
    • 出津教会堂と大野教会堂
    • 外海の夜と朝
    • ド・ロ神父のお墓参り


    〈内容〉

     明治初期のキリスト教禁教時代、殉教覚悟で来日したフランス貴族出身のド・ロ神父(1840-1914)の足跡をたどりつつ、江戸初期から明治、そして現在までつながる長崎外海(そとめ)・五島列島の信仰の姿を追う旅行記。
     外海は、厳しい弾圧にも耐えキリスト教信仰を守り抜いた土地で、遠藤周作『沈黙』の舞台でもある。また、ド・ロ神父は、当時の価値で10億円という資産を当時貧困で苦しんでいた外海の人々のために惜しみなく費やし、土地開墾から貧困の母子救済、医療、教育、地域の産業振興まで、日本の福祉事業の先駆けとも言える仕事に奔走した。没後百年の今も「ドロさま」と慕われ、外海にある墓には花が絶えない。
     ド・ロ神父はなぜ外海に一生を捧げたのか。江戸時代の潜伏キリシタンの歴史、外海の信徒たちが逃れるようにして渡った五島列島。現在も禁教時代から受け継がれた宗教の形を守り続けるかくれキリシタン…。外海での潜伏キリシタンの姿、そして、江戸時代。
     偶然から始まったド・ロ神父との出会いが、五島列島への旅まで広がっていく。


    〈冒頭抜粋〉

    偶然が重なり外海へ

     二〇一五年一一月、秋雨が降っていた。
     長崎に旅に出てお目当ての県立美術館の展示を見て、半日時間が余ったのでどうしようかと、傘を差しながら暗い空の下で市内をふらふらしていた。
     観光名所になっているところは、何度目かの長崎だからほぼ回っている。キリシタン殉教跡や原爆関連など人々の苦悶が刻み付けられた地には、足を運びたくない冷たい雨だった。
     ふと手に取ったパンフレットの中で触れられていた潜伏キリシタンの里の話。
    「外海(そとめ)は、角力灘(すもうなだ)に面した地域で、西彼杵(にしそのぎ)半島の西岸地域をいう。禁教時代から明治まで、潜伏キリシタンが代々信仰を密かに受け継ぎ、遠藤周作『沈黙』の舞台ともなった。明治初めに来日し、外海の出津(しつ)地区には、キリシタンのために一生を捧げたド・ロ神父(1840-1914)が建てた教会、潜伏キリシタンの遺物を展示した地域の博物館、遠藤周作記念館などがある」
     長崎市内だから、半日あれば十分行って見て帰ることができる。ここに行ってみようかな、と思った。だが、バスセンターが複雑すぎて、複数の路線バスが同じところにやってくるので、外海方面に行くバスがどれだかわからない。数分起きにひっきりなしに到着しては大勢の人が慌ただしく乗り降りする。運転士に尋ねる余裕もなくバスのドアが閉まる。
     言葉がわからない外国人のように、十五分ほど入っては出て行くバスをぼうっと見送っただろうか。空は灰色で肌寒く、ふらりと行きたいと思ったことさえ、もういい加減どうでもよくなって、停留所を離れようとした時だった。
    「あんたも、どろさまのお墓まいりば行かれるとですか」
     声をした方を見ると、小柄な年配の女性が、わたしの方を向いていた。
     どろさま?  不思議な響きだが、きっとパンフレットの中に書かれていた外海の人々に尽くしたというド・ロ神父のことだろう。この女性は、百年以上前に亡くなったド・ロ神父のお墓まいりにいつも通っているのだろうか。しかし、なぜ、わたしが外海に行きたいことがわかったのだろう。
    「はい、外海に行きたいと思うのですが、このバス停でいいんでしょうか」
    「あと十分くらいでバスは来ると思いますが」
     と言って、女性は片足を引きずりながらゆっくり去っていった。
     行くのをやめようとしていたわたしの肩を掴み、もう一度視線をド・ロ神父に向けさせられたようだった。外海へ行こう。そう決めて、わたしはバスを待った。


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