「店主だけが取り残された。ロビーは元通り、NHKの音響と、看護婦の声が目立つ物静かな場所に戻った。竜巻は何処までも大きくなる。自分は台風の眼で椅子に座って周囲を眺めるだけの人間だ。有機的な人形だ。精巧な機械人形だ。竜巻の風圧が店主の横面を叩いた。しかし全く痛みを感じない。杖を突いた老人が難儀しながら長椅子に座った。空は晴れていた。日光と蛍光灯の明かりが溶け合って明るかった。地軸が安定しないような歩き方で店主は歩き出した。遣らなければならないことは全て終わった。では、この次に何を遣らなければならないだろう、と店主は考えた。コツンコツン、と自分の足音が骨を通じて無機質に響いてくる。階段の踊り場に造花が花瓶に入れられていた。ここは裁判所だった。ここは刑務所だった。どれも関心の無いことだ。そして店主にとって一番無関心だったのは、自分自身のことだった。」
……『Conturing the Whirlpool』より抜粋
●第三短編集。全五編。某大学の文芸部時代の裏傑作選。
読める人だけが、読んで下さい。それ以上は望みません。
『The Night with Love and Laughter』
『Satisfaction』
『Lark's Tongues in Aspic, Part Two』
『How to Dismantle Virginity』
『Conturing the Whirlpool』
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