この国は、各地に、数多の地主神が祀られている。
平時は実りと豊かさをもたらす和魂だが、ときに荒魂となり、災厄をなす。
その荒魂を鎮め、和魂に還す役割を担うのが、巫師と呼ばれる者たち。
なかでも「南條家」と「北條家」は、二強の巫覡の氏族と謳われていた。
並ぶ者のない高い巫力を持ち、若くして南條家の当主になった朔弥と、
北條家の出来損ないと蔑まれた満継は、幼い頃からの親友だった。
だが、野心を燃やす北條家の企てにより、南條家は悲劇の滅亡を迎える。
朔弥には、幼い息子、真尋がいた。
一族が滅んだ夜、たったひとり生き残った真尋は、
殺された家族を蘇らせようと、南條家に代々伝わる禁制の神具、御統へと手を伸ばす。
しかし、幼い真尋の力では、蘇りの術は、不完全なものとなった。
真尋の術で蘇った朔弥は、死体に魂が宿った存在となり、
真尋は術の代償に、生きながらに魂を失ってしまう。
御統も千切れ、連なる玉は飛び去り、国の各地に散ってしまった。
封印を解かれた御統の玉は、落ちた先で荒魂を生みかねない。
朔弥は真尋を連れ、御統の玉を集める旅に出る。
再び御統を封印するため、
そして、真尋の魂を取り戻し、自らを葬るために。
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命をもたぬ体に魂を宿した父と、 魂をもたぬ体に命を宿した子の、
あるべき死と生を取り戻す物語。
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切なくも優しい和風ファンタジーです。
【試し読み】
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