プロローグ
荒れ果てた丘に、一人の少女が佇んでいる。
足元には数多の人の骸が打ち捨てられ、地面に流れる血を堰き止めていた。少女はまるで赤い池に浮かんでいるようだった。降ろした剣先からも赤い滴が垂れ落ち、池を禍々しく潤していた。
生来の赤髪は血によってさらに赤く染め抜かれ、死の匂いを乗せた風に巻き上げられていた。深い緑の瞳は、少女を囲む、先ほどまで人だったもの達を鮮明に映していた。
その姿は、まるで死の丘にたった一輪咲き誇る、真紅の薔薇のようで。
——恐ろしいほど生々しく、哀しく、美しい光景だった。
山際に朝日が昇る。
丘にゆっくりと、戦の終わりを告げる光が差す。
血塗られた少女を、慈しみ照らす。
まだ年端もいかない薔薇の少女にとって祝福であり、呪いであったことは。
少女があまりにも、戦の神に愛されていたことだろう。
***
辺境伯令嬢のローゼリアは、男兄弟の紅一点。亡き母と同じ薔薇のような赤毛が特徴的な彼女は五年前の戦争から立ち直りつつあるこの辺境の地で、取り戻した平和をささやかに享受していた。
しかしある日、王宮から王国の第二王子、アベイユが求婚に訪れて!?
戦争で心が傷ついたローゼリアは、甘い蜂蜜のような王子の溺愛ぶりに、少しずつ惹かれていく。
王道西洋風ラブロマンスの、プロローグ編になります。
続きは今後カクヨムにて掲載予定です。
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