某月某日
私は紅州国に足を踏み入れていた。
この国の王は横暴で、民の生活を圧迫しているという噂であったが、いざ赴いてみると、なるほど、碌な政治をしていないことがありありとわかる。
貧困にあえぎ、路上で物乞いする子どもや、身体を売る女達。さらには彼らのように生きるために足掻くことすら出来ず路傍で腐っていく死体達。
道中、何度心を痛めたことだろう。
そして私は昨日、ふとした興味から紅州の西にある、幻夢山という山へ登った。紅州に入った際に泊まらせてもらった老夫婦から聞いた、「風を創る娘」の話に強く心惹かれたからだ。
何でもその娘は、風を自ら創り、操る仙界の力を持っているらしい。
この紅州に吹く風は皆、娘が創った風というではないか。
興味本位だった。ただ、「国」という存在による現実から目を背けたかっただけだろう。
——そして私は、出逢ったのだ。
(劉英の手記より 一部抜粋)
***
中華風の国を舞台に、旅をしていた青年が風を紡ぐ美しい音に惹かれて、一人の女性と出逢う話。
素敵な表紙は友人に描いていただきました。
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