地に足つけた考え。進路希望調査を配られた高校二年生二学期の教室は静かな緊張と期待で満ちていた。
刺すような寒さの十二月の夕暮れ。
「お前はどうする?」
学校の帰り道。軽音楽部の友達とコンビニの前で肉まんを食べていたらふいに尋ねられた。
「どうかな。地に足つけた考えがいいと思う。一応進学校だし、手堅く四大目指すわ」
「俺は東京へ行く」
友達は肉まんの包み紙を強く握りしめてもう昇ってきた一番星めがけて言った。
「青いな、お前は。まあがんばれや」
「お前も行くんだよ?」
僕は肉まんの最後の一欠片をむせそうになった。
「春まで待つから!」
友達が僕の目を見て言った。
「それまでに行くか行かないか、決めておいて」
そう言うと友達は自転車にまたがって走り去ってしまった。
「春まで待つ、ね」
一人残された僕はつぶやいた。
春が遠く感じるのはこの鬱屈とした教室が辛いから? 世間とか親とか学校とか大事なものはあれど僕の未来を決めるのはそれらではないだろう。
春に新しく買うギター。あいつと僕の夢をのせても悪くない。
「まだ青いな、僕ら。地に足つけるのはまだ先かな」