この小説は、なかなか出版社に認められない大坪命樹が、インパクトのある作品を書こうと思って、作ったものです。珍しく登場人物の構成を考えてから書きましたが、小説の構造は途中で大きく変化させたものです。多元焦点で書かれていますが、差し挟まれるように平成末期の描写が入るのは、そのためです。
多くの登場人物の視点で描かれていて、さまざまな人々の思いを書き分けるのが難しかったため、少々書き損ねている部分もあり、自分では恥ずかしいところも多いです。しかし、同時に大坪の作の中ではもっともインパクトがある作品だと思っております。
出生の謎を抱えた森田望一は、背負った大きな業に打ち勝てるのか? 恋愛ストーリー仕立てには成っていますが、いろいろなものが作中に描かれております。ぜひ、みなさんに御一読戴きたい小説です。