こちらのアイテムは2018/1/21(日)開催・第二回文学フリマ京都にて入手できます。
くわしくは第二回文学フリマ京都公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

たぬき温泉

  • い-37〜38 (小説|純文学)→配置図(eventmesh)
  • たぬきおんせん
  • 小西アマリリス
  • 書籍|A5
  • 40ページ
  • 200円
  • 侵 入 者

    「ウニ食べる?」って、お箸にとってあげたら、そのままアーンしちゃったカズ君の無防備さが群集の中に晒される。阪神百貨店「東北六県物産展」。夏休みの土曜は賑わっていた。アーンされたので、渋々ウニを口にいれてあげる。まだお友だちなのに、カップルみたいな私たち。カズ君がかっこよすぎるから、他の人の視線が気になって仕方がない。   次々と物産市を回る。米沢牛のコロッケが行列で、匂いにつられて並んだ。でも、その大きさを見て諦める。他のが食べれなくなっちゃう。カズ君だけコロッケを買って一口。「おいしいよ」って、差し出されたけれど、私は首を振って断った。
    人の食べかけを口にすることができない。厳密に言うと、すごく苦手。マーキングした領域に誰かが割り入ってくるような落ち着かない気持ちになってしまう。
    比内地鶏の親子丼に喜多方ラーメンまで食べたら、もうお腹はいっぱい。のくせに、最後は小岩井農場のアイスが一口だけ食べたくなる。でも、スイーツを食べると、いつも途中から口の中が、ねばつく。わかっているのに一口だけの欲望に、一個全部を買わなくちゃいけなくて、そのうちアイスはツンツンしてグルグルして半分くらいドロドロになった。そんな、私のちょっと汚いのに……を、カズ君は取り上げると平気な顔をして食べてしまった。
    誰かと食べ物を分け合うことができない私の、唾液まみれのアイスがカズ君の体の中に入っていく。瞬間に私まで溶け始めて、どうしようと思う間もなくドロドロがはじまる。不法侵入者カズ君。溶けているのは私なのに、私の中には、もうカズ君が入っている。あついあついあつい。

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