「宇宙に恋して」偲川遥
──だから生命は完璧なのよ。「素数に恋して」泉由良
数学は最終的結論に達するということは無い。
それは志した瞬間から、死亡契約書に真っ先にサインを入れてしまうような途だった。それでも数学を習い始めた頃の私は〝至高数学天〟という空想を、ふんわり思い浮かべて生きていた。そこでは実数が、虚数が、舞い散りながら、全てが同時であり計算され続けている。そんな妄想に耽っていた。夢みがちだったのだ。届かない。私は何も成すことは無い。
──絶望で失神出来たらいいのに。
彼女はそう呟いていた。
「詩が好きなんだ。誇れないよね」
一生整数論のことを考えて生きていくのだと思っていた筈だった。挫折と志と無限への憧憬。
生物学と数学、それぞれを志した理系(?)女子2人が書いた掌編です。
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