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アンチ・サイオニック・シティ

  • B-11〜12 (小説|ファンタジー・幻想文学)
  • あんちさいおにっくしてぃ
  • 野間みつね
  • 書籍|A5
  • 116ページ
  • 500円
  • 2019/12/21(土)発行

  • とんでもない。
    この実験都市への訪問許可したんだ。


     超絶的な超能力者サイオニック“クレイン”こと頼山紀博よりやまのりひろの許に、銀河連邦軍情報局の高官となった旧知の友・吉沢満よしざわみつるから持ち込まれた依頼。それは、放棄された植民候補惑星ジンジャーの実験都市に残されたアンチサイオニック装置研究データの回収サポートであったが……

     野間みつねが中学~高校時代に書き散らしていた『レジェンダリィ・クレイン』──未来世界で生きる超絶超能力者クレインこと頼山紀博青年が主人公のシリーズから一作品を選び、徹底的に加筆改稿。書き下ろし番外編「時間差は殆どゼロ」も収録。

     === 以下抜粋 ===

     超光速航法が実用化されて既に半世紀以上とはいえ、太陽系外の植民惑星へ行くには、半月から一か月ほど掛かる。
     ジンジャー星の場合、二十日の行程が必要であった。
     任務自体の機密性が高いことから、研究開発部の調査隊も使用した艦が用意された。目的地をプログラムしておけば自動航行してくれる、乗員を要さず切り回せるタイプの超小型艦艇である。……途中で事故など不測の事態が起きた時の対処能力的に問題があることは言うまでもないが、情報局員が機密性の高い任務で宇宙に出る際は「よくある」移動方法なのだそうだ。
    「だから情報局員は、何処の部の所属でも、適性の有無に関係なく小型艦・戦闘機の操縦アストロゲート訓練もひと通りは受けておかないとならないの。いざという時に自力で帰還出来るように」
     高山たかやま理沙りさの説明を聞いた頼山紀博は、装飾性が皆無に等しい白色のコーヒーカップを口に運びながら、苦笑いを浮かべた。
    「流石にそれは見ただけじゃ“学習”出来ないな」
    「されたら引っ繰り返るわ」
     理沙は、カウンターテーブルに僅かに寄り掛かるように腕を組んだ姿勢のまま、軽く肩を竦める。……地球を出発してから五時間、既に一度超光速跳躍ワープドライブを行なって太陽系の外へ出ており、次の跳躍ポイントまでは自動航行に任せていれば良いので、こうして談話室ラウンジで普通に休憩することが出来る。
    「……でも、何だか不思議。吉沢副長官の話を聞けば聞くほど、信じられないくらいの物凄い超能力者サイオニックなのに、全然そんな“化物”めいた雰囲気がないから、頼山君」
    「あはは」
     紀博は笑って誤魔化した。……実際に自分と戦ったことのある情報局員達なら、理沙の言葉には全力でかぶりを振るに違いない……と確信出来るが、そこは黙っておく。遙か昔のこととはいえ、理沙は、自分が恋をしていた相手なのである。その相手から怯えの目で見られたいと思う自虐的な趣味はなかった。
    「ところで高山さん、前にもジンジャー星に暫く滞在してたって満から聞いたけど、どんな感じの惑星?」
    「そうね……植民惑星候補になったくらいだから、地球に似ているわ。恒星との距離も適切で、大気組成も類似。惑星表面の七割が海。植物に分類するのが適当な、光合成を行う生物は地上に居るけど、動物は……少なくとも大型のしゅは今のところ地上には見当たらない。海中で原始的な生物が幾つか確認されたから、地球からこれ以上に色々持ち込みさえしなければ、徐々に進化してゆくかも」
    「へえ」
    「でも、天候の移り変わりが地球より激しくて……大気中の有害物質も、人によっては影響を受けるレベルだったの」
     理沙は、睫毛の長い目を静かに伏せる。
    「……私の婚約者フィアンセも、それが原因で病死したわ。私はひと足先に異動で地球に呼び戻されたけど、彼は研究者だったから、最低あと一年は帰れないって……だから、彼が地球に戻ってきてから式を挙げようって約束をしたの。でも、その一年の間に彼は向こうで倒れて……遺体は『解剖で病因等を詳細に調べ、少しでも今後の移住に役立ててほしい』って遺言があって献体で地球に戻ってきたから、辛うじて彼の故郷に埋葬することが出来たのが救い」
     紀博は何度かまじろいだ。口を開きかけ、しかし閉ざす。迂闊な相槌は打てない気がした。……が、理沙はそんな紀博の様子にすぐ気付いたか、「あ、御免なさい」と軽く微笑んだ。
    「ちょっと湿っぽい話になったわね。もう、三年も前のことだから、ちゃんと立ち直ってるわ。安心して。ジンジャー星に行けと命じられても拒否感なく『承知しました』って即答出来たくらい」
    「拒否……って、え、軍での命令なのに拒否出来るの?」
     言葉を返せる話題になったことに内心ほっとしつつ尋ねた紀博に、理沙は「断わっても構わない、という命令だったから」と笑顔で答えた。

         ───「第三章 行程」より

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