彼が結婚するかもと言ったとき、二人で観た景色のディティール。結婚が幸せであるという前提を持っていないこと。彼と過ごした時間。彼の口癖、どこまでいっても友人であるがゆえ、わたしは必要のないときに一緒にいられない存在になること。それらすべてはその場に必要のない話だった。しかし、わたしたち二人の時間を刻み込むためには必要な話だった。生半可な気持ちで握った彫刻刀で刻まれた文字や模様などとても視認できないように、わたしはそれはもう彫刻刀を握力計かなにかと勘違いして強く握って、その場にわたしと彼、を刻み込んだのである。