片想いに疲れた の由和(よしかず)は、万年筆のインクを零したような、赤く濁った夕暮れ、烏の群れに攫われ姿を消した。
残された の一(はじめ)は、失って初めて、己の奥底に眠っていた執着と愛に気づく。
一は由和を奪還するため、理の通じぬ「烏の世」へと足を踏み入れる。
時を同じくして、もう一つの運命が動き出す。
「大切なものなど何もない」と空虚に生きる の唯(ゆい)。
だが、異界の主である「烏」は、その孤独を甘く見初め、彼を漆黒の檻へと連れ去った。
連れ戻そうとする手と、絡め取ろうとする翼。
二組の番(つがい)の運命が、烏の鳴く境界で激しく交錯する――。