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〈無色〉の肖像

  • 南1-2ホール | D-38 (小説|エンタメ・大衆小説)
  • むしょくのしょうぞう
  • 明乃ゆえ
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 146ページ
  • 500円
  • 2025/5/11(日)発行

  • 魔術師の成り損ないとして、長い時を生きるロォ。彼の『肖像』を巡る魔法の物語の下巻。

    あらすじ
    ロォとリブラは、共に王都の異変を解決するために王宮へ向かうことになる。しかしその道中、魔術師、そしてリブラにとって深い因縁のある相手に行く手を阻まれてしまう。
    「あの子を撃って。リブラ」
    自らの過去と対峙したリブラは、ロォに選択を迫られる。
    長い旅路を終えようとするロォと、変革の時を迎える星宮。その中で起こる出会いと別れ、そしてロォの最期の記録。

    本編6話を収録。


    試し読み(本文抜粋)
     転移装置までの道のりは、決して長いわけではなかった。しかし、なるべく気配を立てないように気を張り、嫌な気配を放つ何者かがロォを襲って来ないか常に警戒し、さらに灯り一つない道を会話も無く辿るこの時間は、リブラにとって、様々な方向から不安と悩みと恐怖に一遍に晒される苦痛を味わうものだった。
     深い闇が辺りを包む。二人は夜の始まりに立っていた。転移装置のむき出しの人工回路と魔力の結晶が放つぼんやりとした光が、村から少し離れた鬱蒼と植物が生い茂る林の、道なき道の先に見えていた。
    「着きました。まずは王都の正門の近くまで……。ロォ、様?どうされましたか」
    「様、は必要ない。それよりも君……」
      リブラの後ろを歩いていたロォが、ゆっくりと立ち止まる。暗がりに、白銀の瞳が鋭く光って、リブラをじっと見据えている。
    「やはり僕を嵌めたね?」
     リブラがその言葉の意味を理解する前に、嫌な魔力の気配が一気に増長する。リブラの手が少し遅れてロォへ伸びるのと、何かが二人の横を恐ろしい速さで掠めていくのは、ほぼ同時のことだった。
    「……なんて、冗談だよリブラ。怖い顔しないで」
     二人の少し後ろで木の枝葉がぱさりと落ちる音がする。皮肉っぽく唇の端を吊り上げながら、ロォは器用に微笑んだ。その表情や口ぶりから、擦れた魂から簡単な信頼を得ることは早計で未熟な企てだったと思い知らされて、リブラは唇を噛む。しかし、そうしていられるほど状況は良くなかった。
    「やはり『奴ら』が待ち伏せしていたね」
    「待ってロォ、貴方、怪我を」
     ロォの外套の左肩の辺りが裂け、その中から新鮮な切り傷が見えている。魔力が戻っていない今のロォには治癒が難しいのか、血液がゆっくりと滲み出て服へ染みを作っていく。
    「止血を」
     リブラが処置をしようと手を翳すと、その手はそっと払いのけられる。ロォはぞっとするほどの優しい笑顔だった。目を逸らしたくてと堪らないのに、リブラは全身が固まったように動けなくなっていた。
    「大したことない。それに、君の気を逸らしてわざと当たりに行った」
    「わざとって……」
    「どんな得物なのか、興味があるからね。魔術師を殺せると思っている奴らが、どんな策を長年の知恵と経験から打って出るのか」
     腕についた細く鋭利な傷を、ロォはじっと見詰めている。怪我とは反対の手、骨のような指で傷口から流れる血を拭うと口元へ持っていき、そこで少し躊躇うように止まった。

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