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〈黒色〉の肖像

  • 南1-2ホール | D-38 (小説|エンタメ・大衆小説)
  • くろいろのしょうぞう
  • 明乃ゆえ
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 82ページ
  • 400円
  • 2024/12/1(日)発行

  • 魔術師の成り損ないとして、長い時を生きるロォ。彼の『肖像』を巡る魔法の物語の中巻。

    あらすじ
    王宮に新たな風を吹かせた青年・リブラは、突如として王都の上空に現れた塔の中でウィステリアという本と出合う。ウィステリアは、ある魔法使いの居場所を突き止めて塔へ連れ帰ることをリブラへ頼む。
    そして、リブラが辿り着いたのは、ロォの旅路の果てだった。

    本編5話を収録。
    初版売り切れ次第、加筆修正をした二版に切り替わります。内容に大きな変更点はありません。


    試し読み(本文抜粋)
    「リブラさん!ここなら結界が弱くて入れそうです!」
    「でもこの窓、開きませんよ。どうします?」
    「……私が。あとに続いて」
    「え?……って、うわぁ!割るんですか!」
    「おいおい……品行方正ですって澄ました顔して意外と大胆だな……」
     およそ十日前に王都に突如現れた塔は、強い魔力の結界が張られた形跡があった。危険を考慮してリブラと、箒で空を飛べる二人の部下による調査を行ったが、収穫は多くなかった。入り口が見当たらない為に窓を割って侵入したものの、塔の中に充満していた強い魔力と瘴気に当てられて思うように行動ができなかったのだ。実際、入ってすぐに全員が箒のバランスを崩して床へ放り出されてしまった。
     濃く、恐怖を覚えるほど強い魔力が頭痛を誘発している。そう気付いてすぐに、リブラは自分に対して浄化と守護の魔法を施した。頭を振りながら立ち上がると、舞った埃が幻想的に輝いている。
     塔の中は思いのほか明るさがあり、どこか懐かしく変わった匂いに満ちている。何の気配も無く、ただリブラたちの息遣いが聞こえるだけで、耳鳴りが気に触るほど静かな場所だった。足元でぎしりと床板が鳴り、下を見れば部下たちが転がっていることに気付く。
    「おい、しっかりしろ……!」
     彼らはあくまでも飛行の術を持っていただけで、星宮の面子のように強い魔力や呪いに耐性があるわけではない。もう少々対策をして臨めたのならば良かったが、そこまで気が回らないほどにリブラは焦っていたのだった。
     うんうんと唸るだけの部下を見捨てるわけにはいかず、リブラは自分の出来る限りの浄化と守護をかけてやる。どうしたものかと、ようやく辺りを見渡してリブラは目を見張った。
    「ここは、書庫……。いや、図書館か……」
     壁一面の棚という棚に本が並び、それが塔の最上部まで続いている。天井には巨大で精巧な作りのステンドグラスがあり、全ての窓に暗幕を引かれていても明るさがある理由は一目瞭然だ。独特な匂いは、古びた紙とインクと埃っぽさが合わさり、醸し出されているものだった。
     リブラは辺りを警戒しながらも、見たことのない空間に圧倒されていた。建築や図書館は彼の学問の領域ではなかったが、歴史的な価値があるものに間違いないという確信があった。何か王宮へ持ち帰って参考資料にできないかと、棚に並ぶ本を見てみようと一歩踏み出す。しかし、リブラはすぐに足を止めた。上の方から気配を感じたのだ。
    「……誰か、いらっしゃいますか」
     上へ向かって呼びかけるが、返事はない。青年の若々しく、真っ直ぐで透き通った声が本の壁へ吸い込まれていく。
    「私は王宮から参りました、リブラと申します。数日前、この塔が突然王都の上空に現れ、原因を調べるために来ました。その、窓を割ってしまい、申し訳ありません。あとで直しますので……」
    「窓は構わないけれど」
     目の前から女の声がする。驚いて視線を上から戻すと、本が浮いていた。見覚えのある、深緋の革表紙だった。

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