このままでは、赤子も私も救われない
昭和初期/戦前/地方の風習/中絶/救い/法vs道徳/切ない
昭和初期、東京の病院で中絶された胎児の遺体が消えた。
捜査の果てに容疑者として浮上したのは、長野県のとある地方出身の看護婦だった。
地元の信仰と、近代国家の法がぶつかる様を、公式文書と新聞記事のレポート形式で描いた短編・折本小説。
■オススメ読者
● 限られた情報からドラマを想像することがお好きな方
●世間の正義だけでは割り切れない人情を取り扱った作品が好きな方
■サンプル(冒頭より抜粋)
【警察庁報告書】
昭和八年三月二日 受理番号 第三九八号
一、事件概要:昭和八年二月二十五日、東京都中央区内の病院において、手術後の廃棄物(中絶手術による摘出物)が所在不明となる事案が発生。病院関係者からの通報により、捜査を開始した。
二、捜査経過:通報当日、現場捜査へ。該当の廃棄物は、通常手術室より保管室に回されたのち、焼却処分される手順であったが、同日午前十一時頃、保管棚より消失していることを確認。
病院職員への事情聴取を順次実施。医師、看護婦、清掃員、事務員計二十七名から聴取を得たが、特段不審な動きも目撃した者もなし。
該当の手術に立ち会った看護婦・田島久子(仮名) 23歳を重要参考人として、現地にて聴取を行った。