世界よりたった1匹の犬を選んだ少女の、最高にわがままな御伽噺
第一次世界大戦 / 歴史ファンタジー / 少女と犬の友情 / ワイルドハント
ロンドンで暮らす5歳のエリーザベトには、唯一無二の家族で、親友の黒犬『アプフェル』がいた。
だがある嵐の晩、全身真っ黒な魔法を使う大男にアプフェルを攫われてしまう。
アプフェルを探して、ロンドンと魔界を駆け回るエリーザベトは、やがてアプフェルが人類に厄災をもたらす黒犬だと知る。
第一次世界大戦を舞台にした、長編ローファンタジーシリーズ第1巻。
カクヨム、TALESにてWEB連載中の『ワイルドハントの黒妖犬』を書籍化に伴い、書き下ろし短編を2本収録。
■オススメ読者
● 心に子どもの頃の自分が常に居る方
● 海外児童文学が好きな方
■サンプル(序章より抜粋)
石炭の煤が世界を覆っていた時代があった。一九一四年のロンドン。あの頃は夜の霧が死人の肺に残った息のように、病を運ぶと信じられていた。まだヨーロッパの人々が夜の恐ろしさを煮詰めて、神話と異形を作り出していた頃の名残だ。夜は戦争よりも余程、このときは恐ろしいものだった。その夜の化身が、黒い馬を操り空を駆けていた。羽などないのに、その足は霧の上の、星一つ見えない空を疾走する。
空を裂いて現れたのは、ワイルドハント。嵐を引き連れやってくる、黒い軍団の騎行だった。騎士の群れが追っていたのは、地上を切るように走る一匹の黒い犬だ。犬は霧と闇を味方に、ただただ我武者羅に走っていた。生き延びるために。
「逃がすな! 逃がせばまた厄災が起こるぞ!」
ワイルドハントの一人が、怒声を上げて鼓舞をする。黒犬は生物の法則を無視した速度で地上を走っていたが、それでも軍団の馬のほうが速かった。