「ガーネット号は海賊旗@ジョリー・ロジャー@を掲げた。」と始まるこの作品、いま100ページちょっとの、クラーケンの襲撃のところ。なかなか楽しい。金原先生のブログ より一部引用
訳者あとがきには「『バーティミアス』シリーズを愛してやまない私が何度も召喚を試み、唯一成功した魔法で現れたのが、この世界だった。」とあるように、作者(訳者)はジョナサン・ストラウドの大ファン。今回のこの2冊も、『バーティミアス』と同じように「脚注」のコメントが入っている。
嘉月景暎様【古くから伝わる王道ファンタジー】
隅々まで手を抜かず作り込まれた用語集や訳者あとがき。本を開いてすぐのメアリの船の戦いから既に、映画を見ているように目の前に光景が描き出された。どこか冷めたような、一目置いた目でメアリが淡々と加える注釈は、こちらの感情を呼び起こしさらに世界へ深くのめり込まされる。文句なしに私の知る物書きさんたちの中でトップで文章が洗練されています。
松本佳純様【もはや商業本、読み始めてテンションが上がった】
夜の潮の香りがしそうな空気感! ほんとにありそうな海賊の生活! この具体的な世界と臨場感がなおさら好きです。自分も冒険してるみたいになる外国文学文体で児童向けファンタジーっぽい世界観なのに、キャラのシビアな価値観や残虐行為が見られる。ラムズというミステリアス要素によってぐいぐい引きこまれます。
新月望様【いつぶりだろうか、書き手の視点を忘れ、ただ純粋に物語に集中したのは】
外国人作家の超大作ファンタジーを翻訳したかのようなイメージがある。まさに、王道ファンタジーに相応しい作品だ。しかし、ただ王道なだけではない。作品を彩る、魔法や使族などの設定が緻密かつ斬新だ。海外ファンタジーと日本の漫画文化が合わさった、ハイブリッドな作品と言える。
赤羽学様【美3:恐2:愛3:歪2の黄金比、ってご存知ですか?】
どこかにあるかもしれないと信じられる希望、しかし行くことは叶わないかもしれないとさえ思わせる美しさ。登場人物の思考の片鱗に見える恐しさ。そして彼らの冒険を覗き見るうちに覚える愛おしさ。常識の通じない場所で、果たして歪んでるのはあちらかこちらか。あなたがまだ知らない世界を、覗いてみませんか?
それほど、ガーネット号は恐れられている。
「キリル!(*1) お前は武器の用意をしろ!」
痛い! ルドが思いっきりわたしの背中を叩いた。一瞬ぐらりと身体が傾いたけど、なんとか持ちなおす。
「おいっ、痛ぇだろ!」
「悪りい! とにかく早くしろ!」
ルド・アネルは、この船アヴェマール号でいちばん親しい男だ。歳は聞いたことないけど、わたしより上──20くらいかもしれない。
ルドはなるべくわたしに力仕事をしないよう言ってくる。力仕事っていうのは、例えば砲弾の準備だとか酒樽の運搬だとか、そういう仕事だ。何度も「別に男なんだから大丈夫だ」と言ったんだけど、一向に聞いてくれない。彼に言わせれば、わたしの体型は男のうちに入らないんだとか。これでも一年余りは海賊業をやっているし、体も鍛えた。戦闘でそこらの男に負けるつもりはないんだけどな。今までただ男の格好をしてきただけなわけじゃないのよ?
「砂は誰かまいたのか⁉」
遠ざかるルドに呼びかけると、ルドはぐっと拳を上げた。
*1)
そう、これがわたしの名前。正確に言うとキリル・マーメル。もっと正確に言うとキリルは愛称で、フルネームはキャリアール・マーメルシアンにしたんだけど、脳のない海賊たちは長い名前を覚えられないそうなの。だから愛称は短くした。あーあ、長い名前って憧れだったのに。ただここまで読んでおいてもらってなんだけど、この名前はあと数ページもすれば用済みになるわ、残念なことにね。
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上記のような主人公の独り言注釈が、本文下部に差し込まれています。『バーティミアス』をご存知の方は握手しましょう!!