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[詩集] 未練

  • B-38 (詩歌|俳句・短歌・川柳)
  • ししゅう みれん
  • ゆいの
  • 書籍|A4
  • 20ページ
  • 800円


  • 題名が長いこと決まらなかった。私がこの詩たちを書いて、なにが言いたいのか。なにを語りたいのか。そもそもなにがしたいのか。別に自分の部屋に眠らせてもいいようなことを、どうして詩なんかにしたのか。

    ーーーーーーーーー試し読みーーーーーーーーーーーーーーーーー

    朝焼けが見たいと君が言った
    私は別に朝焼けなんかどうでも良かったし
    どちらかと言うと君の息を数えていたかったけど
    君がそう言うから
    私も朝焼けをずっと待っていた気がして

    ふたりは連れ立って
    朝露に濡れた雑草を避けながら
    騒ぎ疲れて眠ってしまった人々から
    少しだけ
    離れた

    まだ夜の匂いが残る外套を羽織った君は初めて会ったとき
    寂しそうだと
    思った
    こどものようで母のような私を
    とらえて
    離さない
    君と
    同じ君のようで
    全く別人のようで
    君の手を握っている私の手が
    とうとうゲシュタルト崩壊を起こした

    私は陽の光を反射しはじめた大気が
    通り過ぎるだけの容れ物になって
    君の指の節に縁どられている
    君がどんなにか寂しそうでなくなってくれたら
    たぶん君は
    もっと早く私のもとから去ってしまう

    朝焼けを吸い込んだ君が
    染まりゆく瞳に答えを浮かべている
    読まれないことを知っていて吐き出された言葉は
    いつになったら死を迎えられるか

    過去の人たちが
    君の元を去ったのは僥倖だと
    思っていたけれど
    君は
    その祝祭の列に私が加わることを
    見透かして哀しく微笑んでいた

    君とゆっくり長く歩く帰り道が好きだった
    君が話し始める時につく溜息が
    君と見た朝焼けが
    君が
    好きだった

    朝焼けが
    嬉しそうに溶けてゆく
    私の手が静かに纏まって
    纏まった君の手を縁取るように
    撫ぜ
    白くなり始めた宙に
    浮いた

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