美少年の美しさが際立つヴァンヌーボVGスノーホワイト195kgに印刷しました。
球畜球技においては、不正を防ぐ意味と新鮮な球を用意して損壊具合を統一する意味から、各試合前に球を作り出す。球畜ビーチサッカーにおいてもそうであり、1ダース用意された球畜の中から両チームの主将が一匹ずつ選び出し、そこから球を作り出し、2個の球の内、計量してより規定に近い方が試合で使用される。残りの10匹は不良品として廃棄される。
栄えある球候補として選ばれ、満場の歓声の中、試合場のセンターマーク上に引き据えられた球畜は、小さい頃から脳内に思い描き焦がれてきた金髪碧眼の美少年様にお目にかかれた感動に震えながら、手を合わせて美少年様を拝む。球畜が、主将である美少年様に見惚れて聖歌を念唱している最中(さなか)に、手ずからならぬ足ずから断首され、試合用の球が出来上がる。
球になるべく地面に転がった頭部は、しかし尚も生きている。内圧を調整するために、主将がその頭部を踏んで血抜きをする。加減が微妙であり、これによって試合球に採用されるかどうかが決まる大切な処置であることから、主将は細心の注意を払い、力を入れすぎないように優しく、力が足りないことがないように強く、頭部を踏んでやる。家畜の生の最期に、誠に勿体ない無辺の慈悲が与えられるのである。
御真影にも現れているとおり、ユール様が血抜きをなさっている時のポーズは、常に観客・ファンたちの熱狂の的である。ユール様もそれを御存じで、ファンたちのために四方に笑顔を振り撒きながら血抜きをなさる。程よく日焼けした白金の肌の下に、逞しくも優美な筋肉が息衝いているが分かる。観客の熱気でスタジアムに吹き出した風に戦(そよ)ぐ幾房もの金髪の内、一房が左手に掻き抱(いだ)かれ別の一房が上品にネイルされた左の人指し指に絡め取られる。笑顔を振り撒きつつも、ユール様には毎試合行われるの常のこと、所詮はルーティンワークであり、多少退屈にお思いなのであろう、右腕では溢れる金絹の房を気怠(けだる)く掻き上げなさっている。
この血抜きの時、球は踏まれながらに、必ず、美少年様にウィンクされるのだと、実(まこと)しやかに工場の球畜たちは言う。球畜たちが命の消える間際に見るという、醜く憐れだった生に報いて美少年様が下賜なさる嘲弄のウィンクである。
ユール様の物語の詳細は『日常と幸福 増補改訂版』の第1章に掲載されています。https://c.bunfree.net/p/tokyo39/42362
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